シーツを被ったパトリック・スウェイジ 『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

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 「新しいアイデアというのは、新しい場所に置かれた古いアイデア」なんだそうである(出展

 『A GHOST STORY』を観て、「死者にはかつての愛する人が見えるが、生者には見ることはできず、そしてお互いに触れることができない」「物には触れることができ、動かすことも壊すこともできる」という作品上のルールが明らかになっていく過程で、「はて、どこかで観たような・・・」と結構な既視感を抱いていたのだが、それは1990年の大ヒット作にあることに気が付いた。

 考えてみれば「ゴースト」だって、それこそ何百回何千回と語られてきた恋人たちの幽霊譚の焼き直しだったはずである。では90年という時代に、どんな新しい場所/器に、古いアイデアが置かれた/盛られたか?と考えてみると、大きく分けてそれは二つあるように思う。一つは「ライチャス・ブラザーズ」であり、もう一つは「ろくろ」であろう(今回は「ゴースト/ニューヨークの幻」の考察ではないので詳細は割愛する)。

 さて、話は戻って『A GHOST STORY』は一体どんな新しい器に古いアイデアを盛り付けたのか?という点だが、これも象徴的なポイントが二つあるように思う。一つは「A24」、もう一つは「ステージド・フォト的な画面構成」である。

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■A24(公式サイト

 A24とは独立系の話題作ばかり手掛ける、現在飛ぶ鳥を落とす勢いの制作会社である。インスタグラムのフォロワーは25万以上。ムーンライト、20センチュリー・ウーマンフロリダ・プロジェクト 真夏の魔法パーティで女の子に話しかけるにはアンダー・ザ・シルバーレイク・・・といった具合に、若者からの支持があり、かつメジャースタジオが尻込みしそうな挑戦的なテーマを扱ったラインナップがならぶ。

 今回の「A GHOST STORY」において、メインヴィジュアルとなる「シーツに黒い目が2つあいたオバケ」という、ある種の子供っぽさはあるが、その反面、攻めの姿勢が感じられるデザインを採用したことも、結果として「A24なら何かやってくれるのでは」といった若者支持層の期待と結びついたのではないかと推測する。

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■ステージド・フォト

 ステージド・フォトとは「登場人物や背景など、被写体に一定の加工を行ない、画面の中にフィクショナルな世界を構築する写真の技法」のことである(出展)。その写真自体が映画の一場面などを想定して象徴的に切り取っている、という風に考えれば、これを映画に用いることはある意味で逆輸入的な技法となるわけだが、デヴィッド・ロバート・ミッチェルの「イット・フォローズ」あたりから、こうした作風を標榜する作品は年々増えつつある。

 「A GHOST STORY」における「画角の丸いスタンダードサイズ」という特徴的な画面に、上記のような手法でアメリカの郊外を「ステージド・フォト」的に収める、という作風は、現代美術におけるビデオインスタレーションのそれにも似ていて、それが作品のアートフィルム的な側面も強調している。アメリカの郊外住宅地を、開拓時代からはるか未来までもを、土地や建築といった観点で切り取るといった手法も、アートフィルム的であり、そして前段に示したように「まさに今のA24!」といった、実験的かつ挑戦的な映画となっていることも確かである。

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 「A GHOST STORY」を斬新に感じるか、「ゴースト」の焼き直しと感じるかは、鑑賞者の映画趣向や映画遍歴に左右されそうだが、A24の歴史にまたもや奇妙な1ページが加わったことは間違いなく、今後も同スタジオから目が離せそうにない。