HOMMヨ - No Past To Love
HOMMヨというバンドの存在を知ったのは約2年前のことだったと思う。ツイッターでVo/Gtのニイマリコという人物を知り、そこからバンドにたどり着き、動画を幾つか見て、初めてライヴに足を運んだのが彼女たちが主宰していた「ママズ・タトゥー」というイベントだった(以降、彼女たちのライヴには何度か足を運ぶことになる)。
HOMMヨのサウンドを、知らない人に「どんな感じのバンド?」と聞かれたとしたら「日本のスリーター・キニーみたいなバンド」などと形容していたのだが、実はアルバム毎にそうした「US/UKインディーロック」的な音像からはどんどん離れていっており、今回、新らしく発売されたアルバムを聴いて、その「形容しがたい」サウンドは更なる進化/深化を遂げているように感じた。
YouTubeなどに「何でもある」時代になり、過去の邦楽のミュージシャンの動画を見ていると、例えば「この〝力石のテーマ〟を歌うヒデ夕樹という人の感極まり方はまるでジム・モリスンのようだ(参照)」とか「全盛期の安全地帯はミネアポリスファンクのようだ(参照)」とか「アップテンポなブラスロックのようにも聴こえるが決定的に何かが違う杉良太郎(参照)」などなど、洋楽の影響はうっすら感じ取ることが出来るのだが結果としてアウトプットされた音が明らかに異彩を放ってしまっているケースは結構あるような気がしていて、それはまた「邦楽っぽさ」とも「昭和歌謡っぽさ」などとも異なるように思われる。もしかしたらこれらが、情報として伝わるのは音源ぐらいしか無かった時代に、その取り込んだ影響がミュージシャン自身の自我と結びついて増幅していった結果、独自な音として表出した「ネット以前の感覚」なのかもしれない。
HOMMヨのサウンドに関していえば、前々作である「NO IMAGE」ぐらいまでは割と濃厚であったUSオルタナ~グランジチルドレン的な音像が、それ以降の「cold finger」~EP「LOADED」と、よりヴォーカルであるニイの歌を活かした路線へとシフトしていき、そして今回の「No Past to Love」では、ロック・パンク・ニュー/ノーウェイヴなどなど、様々な表情を見せつつも、ますます形容しがたいというか、そのどれにも当てはまらないような5曲が収録されることになった。
至らないながらも、その詳細を記してみようと思う。
1.デラシネ
「運べや運べ 俺は獣を親に持ち 汚れた雨も 飲み干せる」という歌いだしから圧倒的な世界が広がるが、ニイの言葉の乗せ方の巧みさにも圧倒される(これほどまでに日本語詩を大切にしているロックバンドを、私は知らない)。
2.#0
軽快なカッティングで始まる朗らかなナンバーだが、「降臨(callin?)救世主」など、ニイの言葉遊びがここでも冴える(この人は本格的にポエトリー/ラップなどをやった方が良いと思う)。
3.fang
「#0」と同様にカッティングのリフが印象的な曲だが、Ba:みちゃん、Dr:キクイマホの強靭なリズム隊による熱が、クラウト/ノーウェイヴ的に繰り返すシンプルなギターリフの無機質さを際立たせる。「誰もがNOとは言わずにすむ世界」という一説は今年一番心に響いた日本語詩かもしれない。
4.koo koo
5曲の中では一番スローなナンバーだが、曲調も含め、ニイが敬愛するという故クリス・コーネルに捧げた曲なのではないかと妄想してみる。
5.ノクターン
HOMMヨ / ノクターン 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
MVがあるので参照していただくのが手っ取り早いと思うが、ポップな曲調が1:30あたりからブラストビート風に転調するので唖然とするが、その移行が自然過ぎることにも驚かされる。そんなトリッキーな構造を持つ曲だが、おそらく一番印象に残るのもこの曲であろうから、MVを制作したい理由も頷ける。
「No Past To Love」は、バンドが新たに立ち上げた自主レーベルから発売となっているが、なぜこれほどのバンドがインディから音源を出さなければならないのか?という疑問がまずあり、そしてできることならこの倍ぐらいの曲数の音源を聴きたかった、というのが正直な感想である。多くの音楽好きの人たちに、HOMMヨの新譜が届くように願うばかりである。
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