2015年公開作品ベスト10


1. 『インヒアレント・ヴァイス』
2. 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
3. 『ジミー、野を駆ける伝説』
4. 『パレードへようこそ』
5. 『誘拐の掟』

1.インヒアレント・ヴァイス
 入り乱れる登場人物・所属団体・それぞれの思惑…という感じで最初はややわかりづらい印象で進行していくが、それが「ある男を救いたい」という、非常にシンプルなテーマに帰結していく。ポール・トーマス・アンダーソンという作家をリアルタイムで追い続けてきた喜びを実感できる一本。
2.マッドマックス 怒りのデス・ロード
 もう言わずもがな、という感じであるが、この脚本制作にあたり招聘された「ヴァギナ・モノローグス」のイヴ・エンスラーの「ワイヴスのモデルは従軍慰安婦」という発言が全てを物語っているように思える、戦後70年の年の瀬。劇場で三回(IMAX、通常字幕、立川爆音)観ました。
3.ジミー、野を駆ける伝説
 「ファーザー、貴方が最後に人の話を聞いたのはいつのことですか?貴方に傅く者以外の話に耳を傾けたのは」という台詞が胸を打つ。(なんか状況は悪化の一途を辿ってるけど)2013年の「ハンナ・アーレント」がそうであったように、今、日本で、観ることの意味が大きい一本。
4.パレードへようこそ
 序盤でパティ・コンシダインがゲイバーでスピーチをする辺りから終わりまでずっと泣きながら観た。ド田舎に、都会から新たな価値観が届けられる、という点ではアン・リーの「ウッドストックがやってくる」と共通点があり、上記3位に挙げた「ジミー、野を駆ける伝説」と同じく公民館映画でもある。
5.誘拐の掟
 はっきり言って上位5作は、豊作でなければどれが1位でも遜色ないクオリティーの作品だと思う。本作も、派手さは無いが、時代の転換期に吹き荒れる狂気に対して「真っ当」であれば足元をすくわれずに済む、というテーマを、乾いたトーンで描いてみせる。本作の監督:スコット・フランクという名前をよく憶えておきたい(前作にあたる「ルックアウト 見張り」も傑作だった)。


6. 『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
7. 『わたしに会うまで1600キロ』
8. 『Mommy/マミー』
9. 『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
10. 『野火』

6.ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
 「誘拐犯」「アウトロー」と、寡作ながら着実にステップアップしてきたクリストファー・マックァリーが、ついにビッグバジェットのシリーズ作で爆発した。感慨深いの一言。
7.わたしに会うまで1600キロ
 「何かを見て・聞いて、全く関連性の無い何かを思い出す」という、人間なら脳味噌の中で普通に行っている作業を、ここまで的確に視覚化した映像作品を私は他に知らない。実はこの手法は監督のジャン=マルク・ヴァレの前作(「カフェ・ド・フロール」「ダラス・バイヤーズクラブ」)がちゃんと踏み台になっていて、この人も下記「mommy/マミー」のグザヴィエ・ドランと共に、今後動向を注視しなければならないカナダ勢(あとはドゥニ・ヴィルヌーヴ)の一人である。
8.Mommy/マミー
 鑑賞時の感想をこちらに
9.アメリカン・ドリーマー 理想の代償
 「A MOST VIOLENT YEAR」という原題が全てを物語っているにも関わらずこんな邦題になってしまってはいるが、「やり方は問わない、結果こそが全て」というポリシーの行く果てに現在のアメリカのドン詰まりがあり、それでは一体どこら辺が転換期だったのだろう?と遡る意欲作。トラックドライバーの従業員詰所の、更衣室が便所と分け隔てられていない、というあの絵面が一番VIOLENTかも知れない。
10.野火
 市川崑版「野火」よりは遥かに少ない制作費の映画であろうが、創意工夫で「プライベート・ライアン」Dデイは再現可能である!という心意気に感動したし、市川版のエンディングとは異なるエピローグを追加したことで、作品のテーマがより明確になったように思う。これもやはり戦後70年の節目に多くの人が目撃すべき作品だと思う。

2015年に劇場で鑑賞した作品は142本。トップ10入りにはならずも、印象に残った作品を以下に。

『EDEN/エデン』『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才科学者の秘密』『キングスマン』『しあわせはどこにある』『しあわせへのまわり道』『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』『シェフ 〜三ツ星フードトラック始めました〜』『ジュピター』『ソロモンの偽証 前・後篇』『ドローン・オブ・ウォー』『パプーシャの黒い瞳』『プリデスティネーション』『マジック・マイクXXL』『マップ・トゥ・ザ・スターズ』『ローリング』『海にかかる霧』『奇跡の2000マイル』『江南ブルース』『国際市場で逢いましょう』『妻への家路』『死霊高校』『唐山大地震』『明日へ』


過去の年度別ベスト10



それではみなさん、良いお年を!