Can I Kick It ? (Yes, You Can !) 「インセプション」


ハッタリの利かせ方が中々痛快な作品でした。「人の頭の中/夢の中に忍び込んで、アイデアを盗み出す/植え付ける」というのがこの映画の主題となっていて、それだけ聞くと「なんだそれ??」と思うでしょうが、その世界の説明を冒頭のエピソードで見事にやってのけ、観客のハートをガッツリと鷲掴みにします。
レオナルド・ディカプリオ演じるコブという男が率いるチーム、このチームで集団催眠のような状態に陥って、寝ている人物(ターゲット)の夢の中に浸入するという、こうして説明を書いている今もその訳のわからなさに「大丈夫?」と自分自身に問いかけたいような気分になってきますが、さらにこの設定が「夢のまた夢のまた夢」というレイヤー構造を成しているという手の込みようで(この夢のレイヤー構造というのが、リンク先をどんどん進んで行って、タブがどんどん増えていく感覚にちょっと似ているんですよね。つまり、新たなタブが開かれた時、今まで読んでいたタブのことはもう忘れている)、この所謂「ゲームのルール」が明らかになっていく過程は単純に「おもしれー!」と声を上げたくなるような感じでした。

例えば、この「ゲームの説明」にしても「夢を設計/創造する」とか大風呂敷を広げておきながら、大仰なCG/特撮によりさらに大きな風呂敷を広げ「ワォ、これ(夢のこと)、あなたがデザインしたの?すごいわ……」と馬鹿みたいなセリフを演者に言わせてそれっぽく見せ、具体的な説明は何一つしない、という手口も非常に巧妙で「あ、上手いこと逃げやがった(笑)」と思いました。
ただ、随所で指摘されている「SFものとしてはOKでも、ケイパー/ハイストものとしては色々穴がありすぎないか?」という意見も物凄く頷けます。id:cinemacさんが「どっちに軸足を置いて観るか?」と仰っているように、自分は上記のバカSFっぽい設定だけで充分お腹が一杯になったので、他の矛盾点諸々には目をつぶることにしました(笑)。SFファンとミステリファンのこだわりの違いを思わぬ形で見せられたようで、何だか面白かったです。

「なんか難しそうな映画だし混乱しそう……」という方には、以下の動画などが参考になるのではないかと。

映画と全然関係ありませんが、マッコイ・タイナーによる名盤も是非(以下はタイトル曲ではありませんが)。

今回はハンス・ジマーのスコアも作品の内容にマッチして凄く良かったと思います。

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追記:先行で既に観た男性フォロワーのほぼ全員が、レオの懐刀役を好演していたジョセフ・ゴードン=レヴィットに萌えているのも何だか可笑しかったです。ようやく「面白東洋人」的な扱いではなく、普通にカッコ良い役が回ってくるようになった渡辺謙にも「良かったね……」と声をかけてあげたくなりました。