ハイスクール!鬼面組「ジェニファーズ・ボディ」


デビルズ・ケトルという片田舎の町の高校に通う、幼なじみのジェニファー(ミーガン・フォックス)とニーディ(アマンダ・セイフライド)。抜群の容姿で学校中の注目の的である小悪魔タイプのジェニファーとは対照的に、堅実で地味なルックスのニーディ。ある晩二人は、地元のクラブで行われたインディ・バンドのライヴで火事に巻き込まれる。なんとか現場から抜け出す二人だったが、ジェニファーはバンドのメンバーと共にバンでどこかへ消えてしまう。数人の生徒が犠牲者になった火災事故だったが、翌朝、何事もなかったかのようにジェニファーはニーディのもとに現れる。だが、彼女は明らかにそれまでの彼女とは何かが違っていた……というお話。
あらすじ自体は、本当に「THE 鋳型」とでもいうべき他愛のないもの。なのですが、監督のカリン・クサマ、脚本のディアブロ・コディは、そうした一般化した鋳型の中に、革新的なメッセージを刷り込ませることに成功しています。
二人は声を合わせて「いわゆるスラッシャー映画、学園ホラーなどでよくある“自堕落なセックスに溺れるティーンがまず最初に犠牲になる”といった、馬鹿げたお約束にアンタイの票を投じたかった」と語ります。
ボーイフレンドに「ゴムを付けて」と臆せずに申し出るニーディに対して、文字通り“夜な夜な男を貪り食う”ジェニファー。この辺りの対比に、クサマ&コディによる「(セックスを)すること自体が悪ではなく、その対処を怠ることが問題」という主張を読み取ることが出来ます。

この「ジェニファーズ・ボディ」の革新性は、そこだけに留まりません。なんとこの物語は、刑務所に収監されているニーディの独白から始まります。つまり開始早々、観客にはニーディが何やら「しくじった」という事実が提示されるのです。
そこで語られる不条理。正しいことをしたからと言って、必ずしもその人間が報われるとは限らない。世界はそれほどシンプルな世界ではなくなってしまった。では、どうするのか?閉ざされた道は、自分で切り開くしかない!そして、その不条理の根源と対峙すべし!(ここで彼女は、象徴的にフードを被る!)
「ジェニファーズ・ボディ」の結末。それは、ニーディが自らの身に降りかかった不条理に落とし前を付ける、いわば復讐を果たすことで幕を下ろします。学園ホラーという決まり切った定型のフォーマットに新たなスパイスを加え、そして任侠映画的な、別の定型を用いてお話を完結させる。クサマ&コディのタッグによる次回作や別の企画があれば、是非また観てみたいです。
追記:と、ここまで書いておきながら、どうやら自分が勘違いしていたことが判明しました……。



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