SF映画ベストテン

 ワッシュさんの「SF映画ベストテン」に参加いたします。
 自分で再認識するためにも、思いついた10本を4つの柱に振り分けてみました。以下に順不同で。

1.郊外SF

「E.T.」 「ドニー・ダーコ」 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
 簡単に説明すれば「郊外を舞台にしたSF作品」ということになるが、ただ舞台というだけではなく、テーマとして切り離せないほど「郊外だから成立する」要素が色々と見受けられるのがこの三作品。
「E.T.」 ハロウィーンのシーンで象徴的なのが「(郊外生活者として)溶け込んでしまえる宇宙人」。クライマックスでは少年たちは建設中の新興住宅地をBMXで駆け抜け、パトカーのランプをタイヤで踏み潰し、そして空を飛ぶ。
「ドニー・ダーコ」 郊外の閉塞感とティーンエイジャーの鬱屈が重なり、更には「彼女を救えるのは自分だけ」という世界系テキストまで織り込んでくる。とがったナイフで見えない壁を破り、斧で学校の水道管を破壊する。こじらせをつるべ打ちするようなヒロインのキメ台詞「ドニー・ダーコ、ってなんだかスーパーヒーローみたいな名前ね」。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」 近隣住民から煙たがられている変人は、タイムマシンを開発してしまうような天才科学者だった!50年代のティーンエイジャーのカップルが、80年代になってからも同じ郊外に住み続け、更にティーンエイジャーの父親母親になっている、なんてとても正気の沙汰とは思えないが、タイムパラドックスを盛り上げる効果的なツールとなっている。
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2.素晴らしき新世界

「ガタカ」 「マトリックス」 「最後の戦い」
 貧富の差が揺ぎ無く隔絶された世界、あるいはもう隔絶すべき世界も見当たらないほど荒廃してしまった未来の物語。
「ガタカ」 定められた運命に抗うイーサン・ホーク。スワヴォミール・イジャックの美しいカメラ。マイケル・ナイマンの切ないスコア。そして車椅子で悪態をつく気高いジュード・ロウ。監督のアンドリュー・ニコルはここから二十螺旋を転げ落ちるかのようなフィルモグラフィーを晒すことになる、まさにビギナーズラックの一本。
「マトリックス」 公開時、ほとんどの情報を仕入れず、一度か二度観た予告で「新手の諜報モノ?」ぐらいの認識で観に行ったらまさに中盤の展開でキアヌと同調しまくって度肝を抜かれることに。これ一本で終わっていれば伝説になっていたかも。
「最後の戦い」 ベッソンのデビュー作で、モノクロ、台詞なしと、中々チャレンジングな一本。「フィフス・エレメント」の雛形がもうすでにここにあったりする。
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3.サイエンスよりフィクションだ!

「ロボコップ」「エイリアン2」
 面白いお話の方便として「先端技術/医療」「宇宙航海」を用いている。
「ロボコップ」 殺したはずの男が実は生きていた!というモチーフは西部劇などでよく使われる。蘇った男が再度悪党にメタメタにやられ、再々度復活して復讐を果たす、という構造はイーストウッド主演の西武劇諸作を思わせる。
「エイリアン2」 公開時のコピー「今度は戦争だ!」が全てを言い表している。まるで勝ち目のない化け物の巣窟に、かけがえのないもの(この映画の場合は血の繋がりのない子供)を救い出すために単身戻らなければならない、という展開は何度観ても燃える。
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4.いろんなことできちゃう

「ミッション:8ミニッツ」 「アンフォゲタブル」
 科学・医学の進歩により、いろんなことが出来るようになったかも知れないけど、もしかしたらそれは得るものより失ったものの方が大きいのでは?という問いかけ。
「ミッション:8ミニッツ」 科学がもたらしたコーズ&エフェクトを、常に一度「己の倫理観」に置き直して語りかけるダンカン・ジョーンズは実直そのもので、「月に囚われた男」同様に、最も信頼できるSFを撮る映画監督の一人であるように思う。
「アンフォゲタブル」 妻を殺した真犯人を探す主人公が、ほうほうの体になりながらも後一歩で真実に辿り着けそうで辿り着けない地獄巡り感が凄い。
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