大統領が見てる。「インビクタス 負けざる者たち」


突然「どうも、ネルソン・マンデラです。いつもブログ拝見してます」というようなメールが来たらどう思うだろう? まず緊張してジットリ変な汗をかくだろうし、いやぁこれからは下手なこと書けねえなぁ! と思うはずである。
『インビクタス』は1995年、南アフリカの弱小ラグビーチーム「スプリングボクス」が、ワールドカップで見事優勝するまでの軌跡を描いた物語で、その背後には当時の南ア大統領:ネルソン・マンデラの多大なる尽力があった、というお話。
とにかく、大統領の「見てますよ」具合が凄い。チームの主将を呼びつけて「そろそろW杯だねー。まぁ紅茶でも」と促したり、チームが練習しているグラウンドに突然ヘリで着陸して「○○君!(ガツッと握手しつつ)練習がんばってる?!」と選手各人に話しかけたりと、もう完全にマンデラペース。あれよあれよという間に、周囲の人々を巻き込んでいってしまうのである。
もちろん、その手腕は、27年に渡る獄中生活で得たもので(「刑務所で色んな人間を観察してきた」と本人が言及するシーンあり)、そんな一般人の懐に入るなんてことは、おそらく彼にとってはお手の物なのである。
そういう意味で言うと、まるで出来る経営者が一大事業を成し遂げていくような快感が味わえる作品となっているのですが、と思ったら粉川先生がもうとっくに言及していました。

そうは言っても、ラストで描かれる異人種間でのハグ&祝祭!というイメージは、どうしようもなく魅力的で美しく、どうしたってウルウルきてしまう。ある瞬間を共有することの尊さを象徴するかのような、大統領の「別に急いではいない。ゆっくり行こう」というラストラインが印象的な作品でした。