3月、4月に観た映画をまとめて

副題のせいで多くの映画ファンがスルーしたであろう本作は、それだけでスルーするには勿体無い、「家族」を真摯に描いた傑作ドラマ。もちろん、犬に主軸を据えているものの、一家の大黒柱となった男が40歳に差し掛かって直面する、何度目かの「理想と現実(主に仕事面)」だったり、それを支える妻だったり、今日的な「家族の在り方」を象徴的に紡ぎ出す事に成功しています。マーリーの名前の由来がボブ・マーリーだったりする辺りがいかにも西海岸文化という感じ。犬のトレーナー役でチラッと出演しているキャスリン・ターナーの激変ぶりに衝撃を受けました。



よく現代アートの作家が、アメコミのヒーローっぽいモチーフで「メタヒーロー物」みたいな作品を創ることがあるけど、本作はそういった感覚を思い起こさせる感じが面白いなと思ったんですが、まぁ原作がそういうトーンなんでしょうね(未読です)。
町山智弘氏が「デートムービー的に気楽に観るヒーロー映画ではない」みたいなことを言っていた気がしますが、自分の横に座っていたカップルがまさにそんな感じでした(具体的に言うと、暴力シーンが訪れる度に、女の子が身を捩ったり手で目を覆ったりするような、そんな感じ)。こういう状況って、話で聞くと「ケッ!よく知りもしネエで観に来るからだよ!」と思うかも知れませんが、実際に真横でそういうリアクションをダイレクトにされると、なんだか段々可哀想になってきてしまってねぇ…。
後半、刑務所の辺りでロールシャッハさん大活躍じゃないですか…。食堂で並んでいると「よーよー何だよテメー」みたいに喧嘩を売ってくる“やんす”キャラの黒人→ジロリと睨むロールシャッハさん→目線の先にはグツグツと煮えたぎるフライヤーが…ってもう、次に何が起こるかなんて分かりきってるじゃないですか!案の定、その女の子「いや〜…」と小声で言ってましたよ…(その後の牢屋に手錠のアレも大変だった…)。
もしまたバットマンをやるとしたら、ロールシャッハ役のジャッキー・アール・ヘイリーさんは「低音でドスを利かせつつ、いかにクリアに発声するか?」っていうコツをチャンベールに伝授してあげたら良いと思う。



どこで読んだか忘れたけど、誰かが「久米宏が角栄にインタビューするようなもの?」と言ってて面白かった。フロスト役の人の「うわヤッベーどうしよっかなー」という、常に「顔で半笑い・心で半泣き」みたいなお芝居が凄く良かった(「クイーン」でブレアを演ってた人だ)。インタビュー邸のバックヤードでのフロストチームのやり取りがやるせなくて良かった。しかしロン・ハワードって人は、こういう映画を撮って「ダヴィンチ・コード」みたいなのも撮る、って、それは自分が本当に撮りたいの映画の為に俳優としてお金を稼いでいたカサヴェテスみたいな感覚なんだろうか?とかちょっと考えた。




アリシア・キーズクイーン・ラティファジェニファー・ハドソンなどという、そうそうたる面子のキャストに期待しつつ劇場に足を運ぶものの、予想を遥かに上回るYA映画っぷりに驚く。全体的にザックリした展開で突っ込み所も満載。でもまぁ、それがYAクオリティだし!と思えばそんなに腹も立たない。ポール・ベタニー演じるホワイトトラッシュ父(!)の屈折は中々良かった(けどそこにはあんまり重点を置いてないんだよね…)。



「プッシャーとなって学校の人気者に」という前半の展開が物凄く面白いのに、後半の尻すぼみ具合がちょっと残念だった。チャーリー役の子をはじめ、チャーリーのお母さん役のホープ・デイヴィス(可愛くてエロい!)、校長役のRDJと、役者は皆好演。でも、この面子じゃなかったら結構ツライ映画になっていたような気もする。どうしたって、ほぼ同じテーマの大傑作「今夜はトークハード」を見返したくなります。
「今夜はトークハード」予告編