DJカルチャーと翻訳文学 〜その驚くべき親和性〜
昨年、K・W・ジーターの「ドクター・アダー」に出会ってしまって以来、30も半ばにさしかかろうというのに正に「茨の道」であるSFに興味を持ち始めてしまった訳なんです。最近は古本屋に行くのが楽しくて楽しくて、時間が許す限り、仕事帰りに通勤径路のブックオフやそれより小規模のチェーン店をひやかすのが日課となっております。
その割には自分の読書ペースは決して速い方ではなく、積読本は文字通り積まれていく一方なのですが、なんかこう、掘り出し物/レア物にフイに出くわした時の恍惚とした感覚が「何かに似てるなぁ」と思っていたのですが、それがかつて熱心だった「レコード掘り」と驚くほど似ていることに気が付きました。
1.○○文庫=レーベル
上記画像はよく寄る某大型チェーン店(さっき名前出したじゃんか)のハヤカワ文庫のコーナー。ご存知の方も多いとは思いますが、ハヤカワ文庫には「HM=Hayakawa Mystery」「SF=Sience Fiction」「JA=Japanese Author」「NV=Novels」「NF=Nonfiction」「FT=Fantasy」という6つのジャンルがありまして、それぞれ背表紙で色が分かれています(↑で説明すると、一番上段の肌色がFT、中段白色がNV、下段水色がSF)。他にも海外文学の文庫というと、有名どころでは創元文庫だったり、キングで慣れ親しんだ新潮文庫があったり、はたまたキングで親しんだ文春文庫や、やっぱりキングで慣れ親しんだ扶桑社文庫(キング凄いな!)などがあります。それまではただ何となく書店/古本屋に通い続けて、漠然と「海外文学のコーナー」だったものが、意識して棚を見てみると「どの文庫がどんな作家を抱えていて、どんな色で売っていこうとしているのか」が見えてきたりする日が、ある日突然やって来るような気がします。
自分が90年代の半ば頃、初めてターンテーブルを購入して、レコード店に足繁く通うようになった頃、一番楽しかった時期はやはり「(ボンヤリとでも)シーンの全体像がつかめた」時ではなかったか?と思います。どんなレーベルがあって、そこから出ている音源はこんな感じの音で、そして自分の好みはこの辺のレーベルの音である、と悟った時。それ以降は、本当に一時期などオナニーを憶えてしまった猿の様に、毎日のようにレコード店に通っていたような気がします。
2.翻訳者=DJ/プロデューサー
外国語で書かれた小説の場合、当然ながら原作者と読者の間には「翻訳者」が介在することとなります。まぁ原書で読めれば言うことはないのですが…。今、訃報に触れ、ちょうどバラードの「クラッシュ」を読んでいるのですが、とてもじゃないけどコレを英語で読んで理解するのは相当の英語力が必要だろうなぁ、とクラクラしました(さすがは柳下先生)。
さて、英語で読みたいけどそれだけの読解力がない、そうした場合は訳された小説を読むしかない。そうすると、翻訳者が訳すものを受け止めるしかなく、訳者の翻訳センスに身を委ねるしかなくなってくる。しかしながら当然、翻訳者も好きでもない作家の作品を、自らの労力を費やして翻訳するようなことはあまりないでしょうし(しかるべき“大人の事情”を除いて)、例えばSF界でいえば浅倉久志先生のような重鎮や、クラシックから現役の作家まで幅広く紹介する柴田元幸先生など、翻訳家で海外の作家を追うことも出来る訳です。
これは「あのDJがかけてた曲だから」「今度のアルバムの音作りは誰々だから」「誰々がリミックスしてるから」という感覚とほぼ同じであると断言してしまっても良いでしょう。
3.改訂/新訳版=リマスター盤
「現在絶版のあの名作が、文庫版で再発!」とか、最近では昨年ハヤカワSFから再発されたジーン・ウルフの「新しい太陽の書」シリーズなどが記憶に新しいところですが、これもレコ屋で日々仰々しく踊る「奇跡の再発!」と一緒。ファンとしては「これを逃してはならぬ!」とばかりに飛びつくわけです。単に再発するだけでなく、生き物のように日々進化する「言葉」というものを「新訳」としてアップデートさせる行為が、いわゆる最新の録音再生技術などを生かした「リマスタリング」作業にあたるのでしょう。
4.選集=コンピ、MIXアルバム
最近ますます好調な「村上春樹の新訳市場」というものがあるように、識者による選集、というのも人気のようで、id:gotanda6さんが一年ほど前に既に指摘していた河出の世界文学全集(選者:池澤夏樹)などは氏が仰る通り、まさにコンピ感覚。「よく知らない作家だけどとりあえず買っておくか」的に、カートに放り込んでしまったという人も結構多いのではないでしょうか?
5.共通お役立ちツール:ガイド本
その割には自分の読書ペースは決して速い方ではなく、積読本は文字通り積まれていく一方なのですが、なんかこう、掘り出し物/レア物にフイに出くわした時の恍惚とした感覚が「何かに似てるなぁ」と思っていたのですが、それがかつて熱心だった「レコード掘り」と驚くほど似ていることに気が付きました。
1.○○文庫=レーベル
上記画像はよく寄る某大型チェーン店(さっき名前出したじゃんか)のハヤカワ文庫のコーナー。ご存知の方も多いとは思いますが、ハヤカワ文庫には「HM=Hayakawa Mystery」「SF=Sience Fiction」「JA=Japanese Author」「NV=Novels」「NF=Nonfiction」「FT=Fantasy」という6つのジャンルがありまして、それぞれ背表紙で色が分かれています(↑で説明すると、一番上段の肌色がFT、中段白色がNV、下段水色がSF)。他にも海外文学の文庫というと、有名どころでは創元文庫だったり、キングで慣れ親しんだ新潮文庫があったり、はたまたキングで親しんだ文春文庫や、やっぱりキングで慣れ親しんだ扶桑社文庫(キング凄いな!)などがあります。それまではただ何となく書店/古本屋に通い続けて、漠然と「海外文学のコーナー」だったものが、意識して棚を見てみると「どの文庫がどんな作家を抱えていて、どんな色で売っていこうとしているのか」が見えてきたりする日が、ある日突然やって来るような気がします。
自分が90年代の半ば頃、初めてターンテーブルを購入して、レコード店に足繁く通うようになった頃、一番楽しかった時期はやはり「(ボンヤリとでも)シーンの全体像がつかめた」時ではなかったか?と思います。どんなレーベルがあって、そこから出ている音源はこんな感じの音で、そして自分の好みはこの辺のレーベルの音である、と悟った時。それ以降は、本当に一時期などオナニーを憶えてしまった猿の様に、毎日のようにレコード店に通っていたような気がします。
2.翻訳者=DJ/プロデューサー
外国語で書かれた小説の場合、当然ながら原作者と読者の間には「翻訳者」が介在することとなります。まぁ原書で読めれば言うことはないのですが…。今、訃報に触れ、ちょうどバラードの「クラッシュ」を読んでいるのですが、とてもじゃないけどコレを英語で読んで理解するのは相当の英語力が必要だろうなぁ、とクラクラしました(さすがは柳下先生)。
さて、英語で読みたいけどそれだけの読解力がない、そうした場合は訳された小説を読むしかない。そうすると、翻訳者が訳すものを受け止めるしかなく、訳者の翻訳センスに身を委ねるしかなくなってくる。しかしながら当然、翻訳者も好きでもない作家の作品を、自らの労力を費やして翻訳するようなことはあまりないでしょうし(しかるべき“大人の事情”を除いて)、例えばSF界でいえば浅倉久志先生のような重鎮や、クラシックから現役の作家まで幅広く紹介する柴田元幸先生など、翻訳家で海外の作家を追うことも出来る訳です。
これは「あのDJがかけてた曲だから」「今度のアルバムの音作りは誰々だから」「誰々がリミックスしてるから」という感覚とほぼ同じであると断言してしまっても良いでしょう。
3.改訂/新訳版=リマスター盤
「現在絶版のあの名作が、文庫版で再発!」とか、最近では昨年ハヤカワSFから再発されたジーン・ウルフの「新しい太陽の書」シリーズなどが記憶に新しいところですが、これもレコ屋で日々仰々しく踊る「奇跡の再発!」と一緒。ファンとしては「これを逃してはならぬ!」とばかりに飛びつくわけです。単に再発するだけでなく、生き物のように日々進化する「言葉」というものを「新訳」としてアップデートさせる行為が、いわゆる最新の録音再生技術などを生かした「リマスタリング」作業にあたるのでしょう。
4.選集=コンピ、MIXアルバム
最近ますます好調な「村上春樹の新訳市場」というものがあるように、識者による選集、というのも人気のようで、id:gotanda6さんが一年ほど前に既に指摘していた河出の世界文学全集(選者:池澤夏樹)などは氏が仰る通り、まさにコンピ感覚。「よく知らない作家だけどとりあえず買っておくか」的に、カートに放り込んでしまったという人も結構多いのではないでしょうか?
5.共通お役立ちツール:ガイド本
- 作者: 大森望
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- 作者: FUNK 45’s EDITORS
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最後になりましたが「SFを語るなら1000冊読んでみよ」という言葉があるように、まさに「千里の道も一歩から」ということで、のんびりやれば良いと思うのです。こういう便利な本を大いに活用しながら。