その80年代を飛び越えて来い!「ベスト・キッド」「特攻野郎Aチーム」
「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」
良かった点
- チーム結成のいきさつを簡潔に描いたアヴァンタイトル。最初にこんなものカマされたら!という多幸感に満ちたオープニングで掴みはバッチリ。
- 山場に次ぐ山場。そして驚くことに、どの山場もダレなしで息をつかせない。これが本当に「ブラッド・ガッツ」を撮った人なのか……改めてハリウッドの資本投資・人材開発ってハンパないな、と思ってしまった。
- フェイスを演じたブラッドリー・クーパー、マードックを演じたシャールト・コプリー(「第9地区」のヴィカス!)が素晴らしい。片や10年代のイケメン、片や10年代のキチガイに、それぞれちゃんとアップデイトされている。
- リーアム・ニーソンのハンニバルも素晴らしい。この人は「96時間」ぐらいから、何度目かの黄金期を迎えている気がする。
- ハンニバル wikipedia ←名前の由来を丸屋九兵衛先生のUstで知りました。
- 80年代のお気楽な感じの娯楽作(テレビドラマ等を含む)をリメイクするとなると、上記に連なる事だけど、オリジナルの設定を踏まえつつ「リアリズム路線」で行くのか、はたまた全く新たな「リ・コンストラクト/リ・アニメーション路線」で行くのかが、問われることとなる。今回の「Aチーム」はリアリズム路線で手堅くまとめていて、今日的な要素としては(色々な映画でも指摘されている)警備会社が傭兵を抱えて米軍の案件に首を突っ込んできたりする所。ハンニバルが「そろいのTシャツなんか着やがって」とあからさまに嫌悪の意を表明したりする。
- これまで「お色気要員」的に扱われることが多かったジェシカ・ビールは、本作だと「エレガントなクールビューティー」的たたずまい。新境地なのではないでしょうか(トレンチコートにスカート、みたいなファッションが良かった)。
なんとなくノレなかった点
- B.A.役のクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンは、本来なら最も美味しい役であるはずなのに、他の芸達者な三人に囲まれてちょっとだけ可哀想。ちなみに公開初日、私は正装で劇場に駆けつけました。
- トム・モレロによる、まるでRATMのアウトテイクかと思うような気の抜けた新テーマ曲。これだったらオリジナルのあのフレーズを高らかに鳴らせよ!と思ってしまった。チャリエンのテーマをリメイクしたAPOLLO 440は本当に偉い。
「ベスト・キッド」
良かった点
- 設定だけ変えて、ほぼオリジナルに忠実なリメイクとなっている。オリジナルがどうだったか記憶が定かでないですが、少年が対峙する挫折や疎外感の色合いは本作の方が濃厚。
- カンフーを教える学校に迷い込む主人公が、生徒たちのカンフーを羨望のまなざしで、恍惚の表情で、それを見つめるカットがあり、その後に自分をいじめている男児もその学校に通って練習していることが判明。「憧れの対象」から一気に「唾棄すべきもの」へと変貌してしまう、あの子供特有の「オール・オア・ナッシング」な感じは物凄く良かった。
- 正直、ウィル・スミスの息子だし、プライベートでは相当鼻持ちならないガキなんだと思う。それが、映画の中とはいえ、キャラクターを通してジェイデン君自身も修行により矯正されていくような感じが画面から滲み出ていて、そこは非常に良かったと思う。
- 第二次性徴期もまだきていないような子供が筋肉を付けていく様って、なんとなくエグいな……と思って引いてしまった(カンフー大会におけるフルコンタクトっぷりも同様に)。まぁこれも「リアリズム路線」を子供でやろうとしたことの結果であり、やはり「お子様ガチっぷり」問題は他の映画でも最近よく目にする気がする(「ぼくエリ」とか)。
- 女の子にプレゼントする、ジャケに本人の写真をあしらったオリジナルMix(であろう)CD-R。いや、ノレなかったというか、ドン引きしたけど、これはちょっと面白かった。
重要なポイントを最後に一点だけ。邦画界はもう少し深刻な事態として
東京の団地に引っ越してきた黒人少年が、いじめっ子(加藤清史郎)からの理不尽かつ執拗なイジメに苦しんでいると、そこへ団地の管理組合の男(千葉真一)が現れ……
っていう映画を撮って貰えなかった事実を受け止めるべきだと思った。