異世界としてのサウスサイド「プリンセスと魔法のキス」


ディズニーが10年代(テンネンダイ!)に初めて贈る*1セル画2Dアニメは、なんとニューオリンズが舞台で黒人の女の子が主人公。この設定だけでかなり制作陣の本気度が覗えるのですが、蓋を開けてみれば、そのディズニーのアッパーなファンタジー加減と黒人文化の魅力が「幸せな結婚を果たした!」という感じの、素晴らしい仕上がりになっていました。
で、本作の舞台でもあるニューオリンズ、およびその他のアメリカ南部が舞台になっている作品を調べていたら、こんな素晴らしいページに辿り着きました。

上記ページで上げられている作品はもちろん、本作「プリンセスと魔法のキス」でも、南部:ニューオリンズという土地が非常に重要な意味を持って物語の舞台として設定されています。幻想的で美しく、しかし一皮向けば怪しく不気味な魅力を併せ持つ土地。一方を生気溢れる大自然として、そしてもう一方を大自然に潜む危険な動植物やそこに暮らす人間、あるいは生と対になる呪いの魔法:ブードゥーとして象徴的に描いています。
そのブードゥーの手先となり、ニューオリンズに訪れたマルドニアの王子と、ダイナーで働く主人公ティアナをカエルに変えてしまう悪役:ドクター・ファシリエはこんな感じの人↓

もうキャラ立ち過ぎだろ!ジャケットの下に紫のババシャツ(ヘソ出し、ピタピタ仕様)にドクロのシルクハットって何それ!?カッコ良すぎるじゃんか!
序盤以降の物語は主に、カエルになってしまった王子とティアナの二人(二匹)と、ジャズマンに憧れるワニ、案内役のホタル、という四人(四匹)のパーティで、魔法を解いてくれるかもしれないママ・オーディーを探すためにジャングルの奥地を進みます。
で、お話自体はある種の王道というか、何の破綻もないので安心なのですが、その分、黒人特有の高揚感だとか、ブードゥーの禍々しさなどの描写が結構とんでもないことになっています。
 
「魔法にかけられて」ではセルフパロディをやってのけ、その裏に真のテーマを忍ばせたように鑑賞時の感想)、本作でも「行動するのは女性、文句ばかりで遊び癖の抜けない男性」という印象的な構図が見受けられ、これをある種の「今日性」と見て取ることも可能でしょう。ですが、id:yakoさんが「落語で若旦那としっかり者の女が…」と仰るように、目新しい話でも何でもないのかも知れません。
とりあえず、最後には誰もが満足するような素敵なハッピーエンドが待っていますので、そういう気分に浸りたい人は是非劇場へどうぞ!

The Princess and the Frog
The Princess and the Frog
posted with amazlet at 10.03.18
Original Soundtrack
Walt Disney Records (2009-11-27)
売り上げランキング: 5212

(ミュージカル映画としても、もちろん音楽も素晴らしいです!)



*1:本国公開は2009年