This isn't IT !!!「マイケル・ジャクソン This is it」


作られるべきではなかったライヴドキュメント映画。これが“あの”マイケル・ジャクソンの遺作だなんて全く持ってありえない。これではまるで「復帰ツアーの様子を収録したライヴDVDの“特典映像”」である。
どうして晩年のMJがあのような容姿になるまで整形手術を続けたか、ちょっと皆さんにも考えていただきたい。おそらく彼は、自分のパブリックイメージに囚われてしまい、そこから抜けられなくなってしまった人なのだ。因果なことに、白斑という病気が、彼の変身願望に拍車をかけてしまったとも言える。
このリハーサル映像でもうかがえる、あの鼻の形はどうだ。あの横から見たときの、まるで妖怪人間ベロのように不自然に釣りあがった鼻!70年代のトラボルタのようにパックリと割れたケツ顎!あまりにいじり過ぎて、もうなんだかよくわからない境地に達してしまっている。
そんな、容姿を人一倍気にすることで、ああなってしまったMJが、果たしてこのリハーサル映像を公開することを、快く承諾しただろうか?おそらく、いや、絶対にそんなことはない。
自分は『BAD』に魅了された世代である。あの頃の、小さなバックルが沢山付いた変なブーツでクルクルと回り、キラキラした光を振りまき、重力に抗うがごとくツィーと動くのがMJである。この映画のリハーサルのような、ヨレヨレのMA-1を着て、ヤンキーみたいなジャージを履いて、6〜7割のさじ加減で歌ったり踊ったりするMJは、断じてMJではない!!!(またステージ下で見ているダンサー達もまたいい湯加減なんだよな…曲に合わせて両手振っちゃったり)
アーティストとしては、出来上がったものが全てである。観客も、そうして享受するものが全てである。そこに一切のエクスキューズは、本来ならあってはならないものなのである。
唯一良かった点は、カナダ人のギタリストの女の子とMJの競演シーン。彼女は「Black or White」でギターソロを担当しているのだけど、
MJ「ここが君の見せ場だ、君が一番輝くところだ、だからもっと高いトーンで!ピィヤァ〜〜〜ォン!(ギターの音を口真似)ボクも一緒にここにいるから!」
泣きましたよ…