殺戮のホイッスル 〜ルワンダの涙〜

ルワンダの涙を観ました(@109シネマズMM)。

1994年、ルワンダ紛争の起きた“血の4月”に、ある学校に逃れてきたツチ族と、それを嗅ぎ付け「やれツチ共をブッ殺せ!」と学校を囲むフツ族の民兵たち。そのこう着状態の数日間を、現実に基づき、学校を運営する神父(ジョン・ハート)と、若い教師の目線で綴った物語。現実通り、終幕には目も当てられないような酷い結末が待っているのですが、中々の力作だと思いました。
現実に起こってしまったのが“虐殺”だけに、自分をはじめ多くの心無い映画ファンは「虐殺描写はどの程度ハーコーだろうか?」という点に感心があるでしょうが、その辺りは「道端にツチ族の死体がゴロゴロしてて、野良犬がそれをクチャクチャ、おいしーワン!」とか「フツがツチにナタを振り下ろすも、草むらの陰などで見えない/見せない」と割りとソフト。しかし、直接描写は控え目ながら、その悲惨さや壮絶さは充分想像できるし脳内で補完できるので、合格と言って良いでしょう。学校を取り囲むフツ族が、ナタを手に当地のダンスでも踊るように心の底から「ツチ殺したい!」っていう感じで囃し立てていて、ホントに怖かったです。一端、脳内で“虫ケラ認定”がなされると、あとは虐殺もただただ娯楽でしかない、という麻痺の極み的な恐ろしさ。

本作の主人公、青年海外協力隊としてルワンダに赴任してきた若い教師を演じるヒュー・ダンシーが素晴らしかったです。「ルワンダの涙」は、彼が「熱意や正義感だけではどうにもならないこともある」ということを、挫折と共に痛感するという、青春私小説的体裁をとった映画とも言えるでしょう。

最初に「目も当てられないような酷い終幕」と記しましたが、実はそこには一縷の希望もあり、その“一縷の希望”をトゥモロー・ワールド同様に演じているのが、クレア=ホープ・アシティ。名前まで“希望”なんですね。