レス・ザン・ゼロ 〜「恋空」〜

「恋空」を読みました。

映画は未見ですが、携帯からならタダで読めるので全部読んでしまいました。色んな意味で衝撃を受けました。読みながらずっと「ここまで来たか!」とゾクゾクしっぱなしでした。
まず簡単に大筋を説明します。オチまで記しますので、もし自分の目で衝撃を味わいたい方は今すぐこのページを閉じてください!

  • あらすじ

前編→高校で男の子と女の子が出会う→付き合う→男の子の元カノが嫉妬して女の子を(男を数人仕向けて)レイプ→男の子元カノに怒る→ゴメンな、と謝る→より深まる二人の愛、図書室でヤッたりとか→(ええぇ?!)→女の子妊娠(そんな事があった後で!?)→流産→色々あってギクシャクする→別れちゃう→それぞれ新しい彼女・彼氏ができる→女の子の家族が突然一家離散の危機(本当に突然に!この時に初めてお姉ちゃんがいたことが判明)→でもなんとなく関係修復→女の子大学進学→前編終わり
後編→高3から付き合いだした大学生の彼氏とラヴラヴ☆(でもまだ前の彼氏のことが忘れられない)→サークルでキャンプに行って青カン→同棲を始める→高校時代の友達から、前の彼氏が実はガンだと知らされる→ガンになったから、女の子を傷付けまいと自分から身を引いたという→女の子ショックを受ける→同棲していた彼氏と別れる→病院へ行って「付き合って☆」→付き合いだす(えぇ!!?)→病状が軽くなってきたので試験的に退院→思い出の川原でデート→いいムード→青カン(川原で!?)→病状悪化→男の子死亡→川原でヤッったときのが100発100中、医者「妊娠しています」→空を見上げて「あなたのこと忘れないよ・・・」→END
事実は小説より奇なり、とはよく言います。昨今、まるでギャグ漫画のような激安犯罪が横行し、現実は「小説より奇」という言葉を裏付けてきたように感じますが、「恋空」のようなケータイ小説を読むと「おいおい!ここには手付かずの自然が盛り沢山だぜ!」と叫びたくなります。「DEEP LOVE劇場版:アユの物語」を観た時もこうした衝撃は感じましたが、「恋空」はその衝撃度を軽々とアップデートしてくれます。

  • その世界観

まず、恐らく半径数キロメートルの範囲で、全ての出来事は起こります。大学は「K大学」とされ、進学するのは高校の時の友人3人。「恋空」では恋人・友人・家族、基本的に人との繋がりはこの半径数キロメートル以内に限定されています。そう、世界には「恋人(バリエーションとして元カレ・カノ)」「友人」「家族」しかあり得ないのです!
そして、「恋空」における災い。そこには「レイプ」「難病」という二つのカテゴリーが存在します。日常に忍び込む非日常として投入されたそれらの災いは、「ヒドイ」「カワイソウ」という最大公約数を有する事象ではありますが、お話の設定や後先の展開を何も考えずにブチ込むことにより、非常にオリジナルなグルーヴとなって物語を形成することとなります。

  • その言葉

「ピースの意味は二つあるんやで。一つ目は、辛い時とか勇気出ん時ピースすると元気が出て笑顔になれる」
「二つ目は誰かに向かって頑張れって応援する時にピースをすれば、された人は成功するんやって!」
上記は主人公の女の子が付き合う大学生の彼氏の言葉。さすがは大学生、これまで彼が生きてきた人生の歩み・重みを感じさせてくれる言葉です。ピースに二つの意味がある。というか、「恋空」を司る全ての事象には二つぐらいの意味しかない。それは登場人物の行動における選択肢も同じ。
「やったじゃん!産もうってか産め!」
これは高校時代に付き合った男の子が、女の子に妊娠を告げられた時に言う台詞です(レイプの後に妊娠した時)。高校生らしく、希望に溢れた言葉だと思います。私は彼らの言葉を全く否定したいとは思いません。
ただ、こういう言葉を口にする友人が回りにいるか?と問われれば、答えは「否」です。一人としていない気がします。作品の中で嫌というほど繰り出される、ちょっと空恐ろしくさえ感じるポジティヴ思考の発言の数々が支持されてかどうかは存じあげませんが、「恋空」は多くの中高生に支持されベストセラーとなり、映画も大ヒットが見込まれています。

これがもし「今の中高生のリアル」であると仮定すると、小説家や映画監督など、自らの手で何かを生み出していく人たちはこうした「今の中高生のリアル」と(多少なりとも)向き合っていかねばならないことを考えると、さぞ辛いだろうなぁ、と他人事のように思ってしまいました。
そんな劇場版を観て「行き尽くとこまで行っちゃえよ、もう」「例え今、目の前でポッキーダンスを踊ったとしても無視出来る自信さえあるよ、マジで」とボヤく、松江哲明監督の映画版「恋空」の感想はコチラ↓


恋空〈上〉―切ナイ恋物語

恋空〈上〉―切ナイ恋物語

恋空〈下〉―切ナイ恋物語

恋空〈下〉―切ナイ恋物語