八重子に気をつけろーっ! 〜オトシモノ〜

「オトシモノ」を観ました(@TOHOシネマズ川崎)
本作の監督、古澤健による前作「ロストマイウェイ(感想)」を観てから期待して公開を待っていた「オトシモノ」。公開初日に観て来ました。
まず、本作はアヴァンタイトル素晴らしいです。まさに幕開けわずか数分間でドーン!と掴みます。そして、まさに今が旬の主演女優・沢尻エリカ演じる主人公の女子高生はいわゆる“優等生”で、優等生ゆえにアウトサイダーとしての疎外感に苛まれていて、そんな彼女が健気に恐怖に対面し、成長していく様は、本作の見所でもあるでしょう。長編2作目にして松竹のメジャー作品というはかなりの快挙だと思いますが、作品としても前作に比べ(そりゃあ予算も違うでしょうが)かなりスケールアップしていたように思います
しかしながら「オトシモノ」は、深町先生もこのエントリで述べられている通り“ティーン向けのホラー映画”という文脈で語られてしまう感も否めないでしょう。それに徹する潔さというのも選択肢として正し過ぎるぐらい正しいと思いますが、それならばやはりあのエンディングで 観客に解釈を委ねてしまうのではなく、もう少し説明してあげても良かったのではないかと思います。
などと「オトシモノ」に対する問題点をボンヤリと劇場ロビーのソファに座りながら考えていたら、なんと古澤監督ご本人がロビーを横切るではありませんか!そう、自分が観た前の回には、初日舞台挨拶があったようなのです。自分は「ロストマイウェイ」の特典映像で監督の姿を拝見しているので間違いありません。恐る恐る「…監督!」と声を掛けると、振り向いてにわざわざコチラやってきてくれるではありませんか!間違いない、あのまるで学生のように若々しい風貌、ジーンズにラコステのシャツ、というラフな井手達で私の目の前に現れた古澤監督に、思わず「サインください!」と口走ってしまいました。
どうらやロビーの中央でサインするのが恥ずかしいようで「あ、ハイ。じゃあ…」と私を劇場ロビーの隅へと追いやります。パンフを差し出すと「裏の…この辺で良いですか?」「いやいや!表のタイトルの横に!」なんていうやり取りが(笑)。正直、ちょっと面食らってしまいました。こんな気さくな“兄ちゃん・ネクストドア”的な好青年が、あんな映画の監督だなんて!
この段階で、さっきまで考えていた作品の問題点などはもう吹っ飛んでしまいました。「クライマックスの電車一両でブチブチッ!っていうアレ、ドーン・オブ・ザ・デッドみたいで凄く良かったです」という私に対して監督は「あー、あれ。なんていうか『エイリアン2』とか、危険な所に自ら乗り込んでいくって興奮するでしょ?」
『エイリアン2』。私が初めて“たった一人で”劇場に観に行った映画。当時10才(古澤監督は72年生まれなので、私より2才上の12才)。もちろん思い入れたっぷりの映画だけれども、この時は何だか動揺して「あー『エイリアン2』!」と言葉をオウム返しして同意するだけでした。そして、同時にその瞬間、『オトシモノ』が、自分と大して歳の変わらぬ一人の監督の手によって作られたということが、急に現実味を帯びてきました。
しばしの談笑の後、監督は劇場を去りましたが、私はしばしまた劇場のソファに戻ってボンヤリしていました。会って話したわずかな数分間で、この古澤健という監督の人柄に魅入られてしまった。また、自分と大して歳の変わらぬ映画監督が、緩やかではありながら着実と成長を遂げているのをスクリーンで確認することができたのは、大きな収穫だったように思います。
今後も私は古澤監督の映画を観続けて支持し続けます。何故ならそれは、いつか彼が巨匠になった時に「オレ、古澤健に会ってサイン貰ったことあるよ」って言いたいから。

ロストマイウェイ [DVD]

ロストマイウェイ [DVD]