「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を観ました(@横浜ニューテアトル)。
トムはインディアナでダイナーを経営する、どこにでもいるような普通の男。子供が二人にキレイな奥さんが一人。でも実は、ごくごく普通の4人家族の家長に見えたパパは、なんと組織のキリングマシーンだったのです!・・・と中村正ジェネレータで一見語りきれてしまうように見えるデヴィッド・クローネンバーグの新作ですが、一言では語り尽くせない映画的な瞬間が何度もあり、興味深く鑑賞いたしました。
自分が非常に面白いと思ったのは、ナードっぽい高校生の息子が、暴漢を超人のように撃退した父に対して「自分の父親にドス黒い過去が…?!」と疑念を抱き始めてから急に暴力的になる、というテーマ。
二人ともとてもイイ顔。
学校ではイケメンのジョックス(右)に絡まれて「ああ、そうだよオレはオカマだよ、殴るなら殴れ」みたいな彼(左)だったのに、父の事件以降に自分の彼女をバカにされてブチ切れる様は、観ていて本当に気持ちが良かったです。「やれやれ!ジョックス叩きのめせ!」と胸の拳を揚げている自分がいて、まるでクローネンバーグに「なっ?状況次第で幾らでも感情移入できるだろ?例えそれが暴力でも」と言われているような気がしてちょっと「ハッ」っとなりました。これは発端となる、上記のダイナーに押し入った強盗を主人公トム(ヴィゴ・モーテンセン)が秒殺するシーンでも一緒。「クズみたいなヤツのクズみたいな死に方キターーー!」とちょっとしたカタルシスでした。そして、必然的に訪れるのは、平和な田舎の一家を襲う陰惨な暴力の突風。父親が血塗れで息子をハグするシーンは、上半期屈指の名シーンだと思いました。
その後、家庭崩壊のドラマにベクトルが向きそうで向かない。後半は壮絶な復讐劇に、大殺戮が起こりそうで起きない(まぁ結構な人数を殺しますが)。THE・寸止めイズム。非常に淡々としていて、「そんなに簡単に孫の手やるかよ(笑)」と監督に見透かされているような気がしました。
でも、この映画の後半の緊張感ったらないです。落とし前を付けるために、もうキリングマシーンであることを隠す必要がなくなったトムの、その「一体いつスイッチが入ることやら…」というピーンと張り詰めたテンションはちょっと尋常ではありません。
だってずっとこんな顔なんだもん。怖いよ・・・。
そんでもってオチはまるでニューシネマみたいなオチ。「アイス・ストーム」かと思った。変な映画だったけれど、色々考えさせられた作品でした。
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