窓に書かれたアルゴリズム「ソーシャル・ネットワーク」


2人ではじめて1つのピースとなるような、完璧に思えたペアが生み出すプロダクツ。それが「1+1=∞」となり肥大化していく中で、一方の意見で引き入れた外部の人間により決定的な「溝」が生じ、そして決別を余儀なくされる。
ロックバンドの伝記でいえば、ジョンとポールとヨーコの物語がそうであるように、「ソーシャル・ネットワーク」におけるマーク・ザッカーバーグ、エデュアルド・サベリン、ショーン・パーカーの物語も、この定型に見事にはまるように思う。
発端は、ガレージで繰り返されるジャムからではなく、学生寮の窓にマジックで書いたアルゴリズムからだった。書かれるのはコードはコードでもギターのコードではなく、リリースされるのはアルバムではなくSNSで、そしてそれは無料である。
ザッカーバーグ&サベリンに群がるグルーピー的なとりまき、融資を申し出る企業、そして、往年のロックスターのような振る舞いのパーカー。「CDは売れなくなったじゃないか」という、Napster創設者であるパーカーの象徴的な台詞があるように、もはや神話はロックンロールからは生まれず、それはネットの世界に移行したのかも知れない。「ロックは死んで、mp3となっていくらでもネットに転がってるじゃないか」とでも宣言するかのように。

Social Network
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そして、本作の音楽を担当しているトレント・レズナーという人が、アルバムの無料配信などを自ら進んでやってきたミュージシャンであるのも、決して偶然ではない。
渦の中心にいると、その渦全体の大きさを測り知ることは出来ない。「ソーシャル・ネットワーク」は、劇的なカルチャーの転換期をオーソドックスな手法で描いた、しかしながら、紛れもない「今」が描かれた映画である。