深町秋生「東京デッドクルージング」
東京デッドクルージング このミス大賞シリーズ (『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 深町秋生
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: 単行本
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スラム化が進む2015年、東京。
都内のダウンタウンで、都市ゲリラの精鋭部隊を形成する民兵のリーダー晃は、中国人が多く集うクラブを襲撃し、偽札作りの名手と謳われる劉をさらった。一方、晃らのクラブ襲撃に巻き込まれて死んだヒギョンの姉シン・ファランは、妹の復讐を誓い、事件関係者を独自に追い詰める。さらに中国の兵隊も加わり、三つ巴の闘いは思わぬ方向へ!
感想が大分遅くなってしまいましたが、深町先生の長編第三作目を読みました。
二作目の「ヒステリック・サバイバー」が、ほぼ“青春モノ”と形容しても良い爽快な終幕だっただけに、今回の「どよ〜〜〜ん」と重い読後感は、また処女作の「果てしなき渇き」のソレに戻ったようで、でも一作目にはなかった軽快なテイストがあったり、なんというか「まだまだ引き出しが沢山ありそうだなぁ」と、次回作に対する期待が一段と膨らみました。
今作は上記あらすじにもあるように、三つ巴どころかそれぞれの内部でもウネウネ抗争などあったりして四つ巴五つ巴といった感じのノワール群像劇となっており、グイグイと一気に読ませます。
2015年という、本当にそう遠くない近未来の東京を舞台にしていて、東京オリンピックの開催を控えていて、かつ主人公の名前が「晃」なんていうと、否応無くあの作品を想像してしまったり…
「AKIRA」で描かれた2019年を観た時、自分は確か中学二年ぐらいでした。主だった都市機能は中心部である「ネオ東京」に集中し、残りは「旧市街」として捨てられスラム化し荒廃している、という世界観を、当時は「そんなになっちゃうのかー」と、まさに中二のツルツル脳味噌で考えていたわけですが、その来るべき未来は、より現実味を帯びた形で「東京デッドクルージング」に反映されているような気がします。
さぁスラム化ニッポン!とか、もう本当に笑えなくなってきている昨今ですが、先日見たアナーキーというヒップホップの人のPVがちょっと凄かったです。
- Anarchy - Fate (日本語字幕版)
昔はこういうギャングスタっぽいのを日本人がやると、もう完全にギャグにしかならなかったと思うのですが、このPVの団地の薄っすらと荒廃した感じとかを見ると「あー…あるかもね…」と暗澹たる気分になります。ラップしてる内容も、そう簡単に「激安」とか切って捨てられない感じで、何ともモヤモヤするPVです…
〜だがIMCの戦闘力も決して侮れない。飽食まみれの豚ではなく、飢えと抑圧のなかで育った新しい日本人だ。大企業の近代的なビルや緑豊かな高級マンション、秦の始皇帝も目を剥くような長大なハイウェイ。それらに囲まれながら大半の国民は終わりのない貧苦にあえいでいる。IMCはスラム街の地獄から這い上がってきた狂犬どもの集団といわれている。
この「新しい日本人」という言葉にグッときましたね。いわゆるニューエイジ思想に端を発したニュータイプと対を成す、飢えと貧困と抑圧が生み出した新しい日本人。きっとメラミン入りのピザとかシアン化合物入りのソーゼージとか、ガツガツ食べちゃうんだろうナァ(事故米のドンブリ飯を片手に)。
最後になりますが、「群馬のスラムを根城にする日系ブラジル人のギャンググループ、カイオヴァス」ってのは、↓このバンドの曲のことですよね?この人たちも、貧しく治安も最低の境遇から、スターダムに登りつめたんだっけか。
- Sepultura - Kaiowas (Acoustic1996)