GOD ONLY NOSE 〜パフューム ある人殺しの物語〜

パフューム ある人殺しの物語を観ました(@TOHOシネマズ川崎)


赤ん坊といえば、バターのようなイイ匂い
ところが彼は、誰にも似ても似つかない匂い
匂いもなければ感覚もなく生まれ落ちた
無臭の従弟として生れ落ちたんだ
上記はニルヴァーナの2ndアルバムに収録されている「Scentless Apprentice」の歌詞。この曲は、パトリック・ジュースキントの「香水」を読んだカート・コバーンが、小説にインスパイアされて作った曲なんだそうです。その原作を映画化したのが本作品。カート自身が小説の主人公である調香師グルヌイユにかなり共鳴し、自己を投影して書いた歌詞のようにも思えます
並外れた臭覚を持つジャン・バプティスト・グルヌイユが、魚市場で(文字通り)生み落とされ、調香師としての才能を開花させ、そして忘れ去られるまでを描いた物語。
凡人の私としては、老いた調香師(ダスティン・ホフマン)の前でその本領をメキメキと発揮していくシーンはひたすら楽しく、匂いに執着するあまりモラルを失っていく過程はひたすら滑稽だったり恐ろしかったり、そして、“調香師ではない一個人”として存在を誰からも認められないその様は、ただひたすら悲しかったり。そんな物語の核である、主人公グルヌイユを演じるベン・ウィショーが素晴らしかったです。近年、ここまで徹底的に「自己の無さ」を演じられた俳優さんは、そうはいないのではないでしょうか。
 
ある方に指摘されて気付いたのですが、イアン・ブラウンにそっくり(なんかこう、骨っぽい感じが特に)
あと、本作の重要なテーマである「処女の香り」ってのは何かもう凡庸なので、「ウンコする時に気張った中年男性の腋の下の匂い」を12個集めると…みたいな方が良かったかも知れませんね。一般的に悪臭とされている匂いから究極の香水が!という方が、作品に奥行きが出た気がします(スイマセンただの思い付きです)。


デイヴ・グロールの力強いキックで始まり、怒涛のギターリフが刻まれていくこの曲は、カート曰く「TAD*1風の“いかにもグランジ”っていう曲を書いてみたかったんだ」とのこと。確かに「グランジってどんな音楽?」と聞かれたら、この一曲を聴かせるだけですみそうな気がしますね



*1:シアトルブームの先駆者的バンド http://www.subpop.com/artists/tad