ポール・ニューマン追悼「ハスラー2」


「彼とゲームしたい?1ゲーム20ドルよ」
「いや、500ドルだそう」
「・・・本気なの?」
「金で冗談は言わん」
「・・・」
「君らは素人だな。500ドル儲け損なった。彼は腕を縛られても負けないよ。」
「・・・そうね」
「じゃあどうだ、500ドルで勝負するか?」
「・・・」
「迷ってるな?俺がハスラーかどうか迷ってる。“イエス”か“ノー”かを決めかねている。お見通しだろ?」
「・・・答えは“イエス”?」
「“ノー”だ。腕前を知らない相手は危険だ。君の役目は彼の腕前をつねに謎に保つことだ。それで相手を上手く誘い込める。わかるか?」
「・・・」
「そこでもう一度聞く。500ドルで勝負を受けるか?」
「・・・“ノー”だわ」
「今の場合は“イエス”だ。難しいだろ?複雑な判断だ。いわば双子の見分け方だ。どちらが妹か姉か?本当に双子なのか?間違えれば金が飛ぶ」

ポール・ニューマンの訃報を聞いて、真っ先にまた観たいなぁと思ったのが「明日に向かって撃て!」でも「暴力脱獄」でもなく「ハスラー2」でした。原題は「The Color Of Money」。一応「ハスラー」から25年経った後の“ファスト”エディ・フェルソンを主人公にしてはいますが、前作を観ていなくても充分に楽しめる独立した作品となっています。監督はマーティン・スコセッシ。ニューマンはこの映画でオスカー主演男優賞を獲得しました。
今回トム・クルーズ演じる“ダイヤの原石”を苦労して磨き上げようとするニューマンはいわばトレーナーの役。師弟関係は次第に擬似親子のような関係となり、アトランティックシティーでの大会を目差し、クルーズ、ニューマン、そしてクルーズの年上の彼女役メラニー・エリザベス・マスラントニオの三人で、お互いぶつかり合いながらもロードムービーのように進行します。この坊や坊やしたトム・クルーズが、いっぱしのハスラーになっていく道中の楽しいのなんのったら!中盤以降は旅の過程で火がついてしまったニューマンが、彼らと別れて独自に大会を目差し、当然クライマックスは師弟対決となるのですが…!この大会の顛末のくだりは、何度見ても鳥肌が立つほどカッコ良いです(特にあの、ヘレン・シェイバーが席を立つタイミング!!!)。
カンヌで賞は獲ったものの、「アフター・アワーズ」の興行的な大コケは精神的にこたえたであろうスコセッシは、ここでは徹底的にオーソドックスな語り口で映画を進めます。どちらかというとエキセントリックな人物に焦点を当ててきたのが初期作品(「タクシー・ドライバー」「レイジング・ブル」「キング・オブ・コメディ」など)だとすると、「ハスラー2」をきっかけに、その比重を人物からストーリーに置き始めたのではないか、と勘繰れるほど、マーティン・スコセッシという監督を語る上では地味ながら重要な作品であるような気がします。撮影技法としても、この後「最後の誘惑」を挟んで「グッドフェローズ」「カジノ」で大爆発する後期スコセッシタッチの萌芽が「ハスラー2」の随所で確認することが出来ます。
ポール・ニューマンの芝居で言えば、これまたカッコ良過ぎるラストラインに尽きる気がしますが、決勝まで勝ち抜いたときの「一人で外に出て小さくガッツポーズ、その後平静を装って会場に戻る」なんていう何気ないシーンが何ともチャーミングでグッっときました。

ハスラー 2 [DVD]

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  • THE COLOR OF MONEY (TRAILER)





R.I.P.