おうちへかえろう「GODZILLA ゴジラ」
映画における残酷な描写の一つに「子供が死ぬ」という状況がある。主要なストーリーと関係なく、台詞もろくにないような子供が、例えば交通事故などで死んだとして、それはある種、三番手ぐらいの大人のキャラクターの死より鮮烈であったりする。
怪獣映画というのは、日本が世界に誇るジャンルの一つであり、昨年で言えば「パシフィック・リム」のような作品が逆輸入的に製作〜公開され、日本でも大きな話題となった。監督のギレルモ・デル・トロ自身も「子供のために作った」というだけに、「パシフィック・リム」での芦田愛菜は死なない。KAIJUに襲われ相当に危ない目に遭うが、生き残って後に菊池凜子となり、でかいロボに搭乗してKAIJUと戦うのである。
低予算の作品を一本撮っただけのギャレス・エドワーズが監督として大抜擢された「GODZILLA」でも、子供は死なない。原発事故を間近で目撃したり、親とはぐれて大怪獣と接近遭遇してしまったりするが、子供は死なないのである。
そのエドワーズの監督デビュー作「モンスターズ/地球外生命体」は、決して子供向きの映画とは言えない。それは残酷な描写云々ではなく、大人の鑑賞に堪え得るドラマが描かれている、という意味である。そしてこの「モンスターズ」では、子供は無残にも死ぬ。それは避けられぬ運命である、とでもいうように、唐突に死は訪れる。
そして「GODZILLA」において、エドワーズは「子供が死なない」要素に加え、驚くべき「ある重要な」要素も描いていた。
「わたしがとても誇りに思っていることなのですが、主人公は軍の人ですよね。本作ではアメリカ国防総省の協力を得ているのですが、主人公は劇中で銃・兵器を使っていないんです。手に持ってはいるけど、発射はしていない。発射した人はみんな死ぬ。発射しなかった人だけが生き残るんです。これって潜在的なものかもしれないけど、ものすごくいい教訓じゃないかと思っています。でも、誰も気付いていないかもしれない。みんな気付くと思ってやったのですが(笑)」
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私はこのインタビューを読んで(エドワーズが嘆くように)初めて気付いたのだが、もしかしたら感覚の鈍った大人より繊細さも敏感さも兼ね備えた子供なら、そんなことはとっくに気付いているかも知れない。まるで自然主義文学の登場人物のように、主人公は怪獣を存在しうる「自然の者」と認識し、危機的な状況においても常にフラットに行動する。
「GODZILLA」での子供たちは、父(ブライアン・クランストン、アーロン・テイラー・ジョンソン)や母(ジュリエット・ビノシュ、エリザベス・オルセン)の、直接的ではない奮闘により守られていたりする。こうした要素が、実際に映画を鑑賞する子供たちに、どれほどの安心感を与えているか。それは今から数十年経った後、「ゴジラ」を一緒に鑑賞した、かつて子供だった大人に聞いてみると良いように思う。
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