「バトル・イン・シアトル」

バトル・イン・シアトル [DVD]
Happinet(SB)(D) (2009-06-26)
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1999年、シアトルで行われた世界貿易機関(WTO)の閣僚会議に反対する市民団体と、抗議行動を阻止しようとする行政・警察といった体制側との攻防を、4日間というスパンで描く群像劇。2007年制作、日本劇場未公開作品。
スチュアート・タウンゼントのイメージって「『クイーン・オブ・ザ・バンパイア』の吸血鬼とか『リーグ・オブ・レジェンド』でドリアン・グレイ演ってたイケメン」ぐらいのイメージしかなかったけど、彼が初監督作品に選んだのが、こんなにド左な題材をだったということが意外だったし、それが非常に地に足が付いた仕上がりになっているのはもっと意外だった。
数名の若者が工業用のクレーンに「デモクラシーは→へ、WTOは←へ」という横断幕をかける、という象徴的なオープニングから、彼らが所属するとあるNGO団体に主眼を据えて物語は進行する。それと並行して会議に関係する人々、出席者、警察、TVレポーター、市長、労組、そして暴力も辞さない過激な抗議団体などを、リレー形式で繋いでいく。
組織化された抗議団体の身体を張った行動に攻防戦の面白さを描き、平和的な抗議行動は逮捕対象と見なさないと事前に約束してしまった市長のジレンマを描き、会議に出席して正式な手段で訴えようとしていた閣僚の失望を描き、所属する部隊の行き過ぎた暴力に疑問を抱くようになる警官隊のある男の苦悩を描く。
正直、この題材でランタイム100分というのは若干食い足りないような印象もあるけど、初監督(脚本も)でこれだけ完成されていればもう十分というか、これよりダメな映画を撮っている監督なんてザラにいるし、そういう意味では将来性は非常に有望であると思う。作風としては「ボーン」シリーズ以降な雰囲気のセミドキュメンタリータッチで、カメラはバリー・アクロイド。こういう人選も非常によくわかってらっしゃると思う。
出演者はNGO団体の活動家にアウトキャストのアンドレ、マーティン・ヘンダーソン、ミシェル・ロドリゲス、ジェニファー・カーペンター、市長がレイ・リオッタ、TVレポーターにコニー・ニールセン、警官側にチャニング・テイタム、ウディ・ハレルソン(妻がシャーリーズ・セロン)、これだけの豪華キャストながらDVDスルーというのは、配給会社もちょっと腰が引けすぎだよなぁ……と思ってしまった。




↑右が実際のデモの様子、左が予告編
※追記:フィクションとわかっていながらも「妊婦が××される」シーンとか、もうホンツに心臓に悪いから勘弁して欲しい……。去年の「クロッシング(韓国)」でも思ったけど。