オーガナイズド・コンフュージョン 〜ブラインドネス〜

ブラインドネスを観ました(@チネチッタ)

ある日、ひとりの男が突然失明する。しかし原因はわからず治療法も対処療法もなし。その上それは爆発的な感染力で拡大し、患者は日に日に増えていくばかり。感染を食い止めようと、患者たちは付け焼刃的に収容所へ護送される。事実上の強制隔離だが、この収容所には一人だけ、まだ感染はせずに視力を失っていない者が紛れていた・・・というお話。
この一人だけ目が見える患者にジュリアン・ムーア、その夫の眼科医にマーク・ラファロ。ムーアは、ただ一人目が見えるというだけで患者の世話を色々焼く羽目になり、収容所がやがて秩序を失い阿鼻叫喚の様相を呈していくのを、一人目撃することになる女性を演じています。
本作の監督であるフェルナンド・メイレレスに、衝撃のデビュー作「シティ・オブ・ゴッド」のような圧倒的なストーリーの作品を求めてしまう人は多いでしょう。
まずはテレビシリーズの企画としてスタートし、それが短編映画という形になり、ワークショップで演技経験のない子供たちを指導することで強固な信頼関係を築き上げていき、満を持す形で長編劇場映画としてのフォーマットに落とし込むことが出来た「シティ・オブ・ゴッド」と、かけられた時間も自由度も確実に違ったであろう原作物の「ナイロビの蜂」そして今作「ブラインドネス」とを比べるのは、やはりちょっと酷なのではないか、という気がします。今作「ブラインドネス」で感じたのは、多分メイレレスという人は物凄く真面目な人なのだろうなぁ・・・というか、この設定ならもっと目も当てられないような惨劇になって良いようにも思うのですが、そこが「物凄く丁寧に原作を映像化した」といった感じの「想定内の惨状」に仕上がっていて、なんだか印象に残りました(両方とも原作未読なんですが・・・)。
とはいえ、「ドーン・オブ・ザ・デッド」以降の、モダンなディストピア感(?)というのも少々語り尽くされた傾向があるにも関わらず、しかしながらあえてそこに切り込んでいこう!という姿勢は大いに評価するべきでしょう(画作りとしてもチャレンジングなカットが結構あり)。あとは自分が個人的に好きな「血の繋がりの無い他人同士が寄り添ってコミュニティを形成していく」というモチーフが、終盤の見せ場になっていたり、何気ない自然現象(雨)に祝福を見たり、失意に暮れていた人々が「ペットを飼い→身奇麗にして→きちんとしたマナーで良い食事を取り→最高のパートナーとセックスをする」といった手順で人間性を回復していく過程などに、この監督:フェルナンド・メレイレスのパーソナリティを再認識したような気がしました。

役者陣は皆素晴らしかったと思うのですが(伊勢谷&木村カップルの思い出話はちょっとどうかと思ったけど)、中でも収容所で一患者から独裁的な暴君に変貌するガエル・ガルシア・ベルナル君が中々良かったです(こんな感じもいけるのね、と思った)。
追記:空中キャンプさんのブコメで思い出したけど、シリアスなトーンの最中に突然繰り出されるガエル君の不謹慎ギャグが最高(物真似付き)。吹いた。

シティ・オブ・ゴッド DTSスペシャルエディション (初回限定2枚組) [DVD]

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ナイロビの蜂 [DVD]

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