インシデント・アット・オグララ

そのレイジ・アゲインスト・マシーンがデビュー当時から「レナード・ペルティエを開放せよ!」と口を尖らせ訴えてきた事件に迫ったドキュメンタリー。92年の作品で監督はマイケル・アプテッド。

事件の全貌を初めて知りました。簡単に説明すると、とあるインディアン居住区でFBIの捜査官と住民が銃撃戦を繰り広げた結果、前記二名の捜査官は射殺、容疑者としてレナード・ペルティエという男が逮捕された通称「オグララ事件」。この逮捕劇がとんでもない茶番かつ誤認逮捕であったというドキュメントです。
この事件が起こるのが75年で、事件に至るまでの居住区の背景が語れらるのですが、おもわず顔がしかめっ面になってしまうぐらいには酷い状況だったりします。まず貧困にあえぐ居住区は、ディック・ウィルソンなる政府寄りの有力者によって牛耳られ、彼の直属のグーンズ・スクワッズなる自警団的組織は政府の資金を後ろ盾にやりたい放題。彼ら「グーンズ・スクワッズ」は旧来の先住民的ライフスタイルで暮らす“伝統派”の人々を、政府から援助された銃器などで脅し、いわるゆ「恐怖による統治」を行います。それにより、70年初頭の三年間でなんと60人(!)もの死亡者が出るも、政府はそ知らぬ顔。どこかでも聞いた事がある「被差別者が更にその被差別者の中の弱者を差別する」という負のスパイラルが見事に形成され、まさに居住区が暴発寸前、一触即発の状態で上記のオグララ事件が発生してしまいます。
その後、ペルティエ氏はFBIが“威信をかけて”でっち上げた、本当にデタラメな物証により二度の終身刑を言い渡され、現在も収監中。獄中からインタビューに答えています。

  • Rage Against The Machine - Freedom


これがその事件をテーマに制作されたPV(映画のフッテージも使用されています)。ペルティエ有罪の際の裁判長のコメント「Justice Has Been Done.」に対して「Justice Has NOT Been Done.」と怒っています
「インシデント・アット・オグララ」では、(制作時の90年代初頭の?)草木もまばらな居住区の荒涼たる風景が空撮により何度もインサートされるのが印象的です。住民も「貧困などの諸問題がオグララ事件以降も改善されない」とボヤきますが、おそらくこういった住民たちに優しいわけがあるはずがないブッシュ政権下で、居住区の人々はどんなに苦汁を舐めさせられてきたのだろうか?と想像するだけでちょっとクラクラしました。