はいすくーる落書(グラフィティで) 〜フリーダム・ライターズ〜

「フリーダム・ライターズ」を観ました(@シネシャンテ)

公民権運動以降、人種差別撤廃の名の下、大幅な教育改革が施された。全ての学校に人種を混合し、そして平等な教育を付与すること。だがこれは明らかに失敗だった。多くの有色人種の生徒たちは、中流白人生徒がマジョリティを占める進学校になだれ込み、そして教育環境が徐々に悪化していくと、白人達はより良い教育を求め、私立校へ逃げ出した。こうして、一部の成績優秀な生徒と多くの落ちこぼれを抱えた“元進学校”が誕生する。公民権運動を発端とし、それからおよそ20年近くは、全米で同じような現象が起きていたという。
「フリーダム・ライターズ」は、こうした元進学校が舞台の物語。理想に燃える新米教師が、ホロコーストも知らなかった多くの生徒たちを大学進学までに導いたという実話に基づき、映画は構成されています。
一見、手垢にまみれた題材の様にも思えますが、劇中、斬新だったのが生徒たちが教師に信頼を寄せるきっかけでありターニングポイントとなる「ラインゲーム」をするシーン。
教室の真ん中に赤い線を引き、生徒を二手に分けて教室の壁に待機させる。そこへ教師が「『ボーイズ’ン・ザ・フッド』を観た人は前へ出て」「2パックのニューアルバムを買った人」などとお題を出し、それに該当する生徒は真ん中の赤いラインに歩み寄る、というもの。これには、指示されたから前に出たにも関わらず、自分の身体行動を伴っているので極めて自発的行動であったように錯覚し、そして真ん中のラインで面と向かったクラスメイトとは連帯感さえ抱く、という非常に巧妙なゲームとなっています。そこで新米教師エリン(ヒラリー・スワンク)は、生徒たちにこんなお題を与えます。
「ギャングの抗争で友達を失った人、前に出て」
そこで、教室を分断する真っ赤なラインで鉢合わせたのが、今まで話したこともなかったクラスメイトでも「友達がギャングに殺された」という共通点により、言葉には出来ない何某かの強い繋がりを感じることができる。「クラスメイトに思い遣りを!」と100万回言うより、この一瞬の出来事は何よりも強烈で説得力があったように思えます。
時代設定が94年ということもあり、使用されている音楽がニュースクール・クラシックでまとめられているので、自分の青春時代を回想しながら少しグッときてしまいました。

  • DIGABLE PLANETS - Rebirth of Slick (cool like dat)


Freedom Writers

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こうした新鮮味には欠けるかも知れないけど良質な作品が、現在、都内では日比谷シネシャンテだけでしか上映していない、というのはいかがなものかと思います。こういう作品こそ、全国のシネコンで消費されるべきだと思うのですが。