「ロード・オブ・ウォー」を観ました(@チネチッタ川崎)。
ブルックリンはリトル・オデッサで細々と銃の密売を始めた男が、アフリカのとある国のお抱えの武器商人となり、ついにはインターポールに付回されるような大物になる。というお話を、事実に基づき架空の物語として描いている映画です。
まず、物語の序盤でニコラス・ケイジ演ずる主人公ユーリという男の「法を犯すのが黒、合法が白だとすると、オレが好むのはグレー」という独白があるのですが、彼の中ではあくまで「銃?ああ、結構な数を売りましたけど、売ること自体は別に違法じゃないですよね?え?!ボクが売ったカラシニコフが戦争で使われてるって?!そんなまさか!!」という「すットボケ通す」信念が貫かれていて、これは「鉄筋を減らせと指示はしたが、まさか法を犯してまでとはそんな…」とか言う木村建設何某の「すットボケ」とほぼ同じです。この事件の発端で全国に配信された「そりゃあ潰れますね。ペシャリと」と、まるで人事の如くポカーンという顔をしていた姉歯元建築士の映像とニコラス・ケイジがダブって見えました(二人ともホラ、頭髪がアレですし…)。「一級建築士としてのプライドもあったが、収入が限りなくゼロになるのは困るので止められなかった」という金銭的な問題こそユーリにはないのですが(冷戦終結で大もうけしたから)、自分のしている事が今は白やグレーでも「後々真っ黒になる」という事を重々承知の上で止めることが出来ない。ドス黒い需要は止まるところを知らず、それが構造的に国家レベルにまで及ぶと、もうちっぽけな一個人としてはどうしようもなく、走り続けるしかない。「だってオレ(武器をさばく)才能あるし止めれば殺されるかも知れないし、自分が殺されても誰か別の人間が自分のポストにつくだけだし」といった、文字通りのダウンワード・スパイラルが描かれていて非常に興味深かったです。マイケル・ムーアのような直球で体制批判をする手もあると思いますが、この作品のように絶望的な負の構造をシニカルに提示することでも、観る者によっては相当なインパクトを与えます。もしこの映画が去年の大統領選前に公開されていたら色々と状況が変わっていたかも知れない、と思えるほどの完成度の作品でした。
アメリカ版のポスターはニコラス・ケイジの顔が弾丸でコラージュされた、ある種のグロ画像なのですが(コレ)、そのパロディとして案の定こんなモノが作られていました。
武器商人という裏の顔を奥さんに知られてしまう、そんなやるせないシーンで、ジェフ・バックリーの名カバー「ハレルヤ」が流れるのには「グッ」ときてしまいました。
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