「ライフ・アクアティック」を観ました(@恵比寿ガーデンシネマ!)。

ワタクシのブログをいつも読んで下さってる皆さんって、ほとんどが20歳以上の大人の人たちだと思うんですが、その中で「自分は大人です」と胸を張って言える方って何人いらっしゃいます?それと、「うわ〜自分がガキの頃に想像してた大人より全然子供じゃ〜〜〜ん!」って思ってる方は何人いらっしゃいますか?自分は言うまでもなく後者なのですが、この映画はそうした「子供の頃に想像していた大人観と、実際に大人になってみての大人観」、この「ズレ」について、ウェス・アンダーソンが一つの答えを示して見せた映画なのではないか?と思いました
物語の主人公スティーヴ・ズィスーは落ち目の海洋探検家でありドキュメンタリー作家です。モデルは記録映画「沈黙の世界」(下記参照)などでお馴染みの海洋冒険家学者のジャン=イヴ・クストーだと言われています。恐らく、子供の頃にクストーに魅せられたアンダーソン少年は「彼みたいなカッコ良い大人が主人公の冒険活劇を撮りたい!」と夢想したはずです。そしてその夢は、「少年時代に抱いた大人への幻想と、そこから生じるズレ」を内包した作品として34歳のウェス・アンダーソンの手によって具現化します
ここでズィスーの年齢を考えてみましょう。1950年生まれのビル・マーレーの実年齢から想像するに、大体50代後半〜60代前半、といったお年頃でしょうか?この年齢についての考察には重要なポイントがひとつあります。はたしてズィスーはオナニーをするでしょうか?ビル・マーレーはオナニーをするでしょうか?ワタクシは両氏共に「いたす人」だと思います。マーレー氏はともかく、劇中、ズィスーはケイト・ブランシェット演じる身重の記者ジェーンに対し、淡い恋心を抱きます。しかし、実はその彼女が自分の息子ネッド(オーウェン・ウィルソン)に恋心を抱くことに対しては激しく嫉妬したりします
物凄いオトナ気の無さです。きっと独りでチンチンだっていじります。60近いのに!!ワタクシも、もはや「ドント・トラスト」される側に回ってしまった三十路男子ですが、60、いや、70近い爺さんが、独り自らのチンチンをいじっていたとしても、な〜んにも不思議だとは思いません。極々自然な生理現象だと思います。そう、たとえ海洋探検家のスペクタクルをどんなにカッコ良く撮ったとしても、奴は自分のチンチンをいじるのです!ウェス・アンダーソンは、「自分の映画を、自分の作風を」追求していく過程で、きっとこう悟ったのでしょう。「じゃあ、彼らに失礼のないように撮らないとイカンじゃないか!」と
劇中、突然船に乗り込んできた海賊たちに対して、ズィスーがブチ切れるシーンがあります。ここでかかる音楽が何とイギー&ザ・ストゥージスの「サーチ&デストロイ」です。ワタクシは大爆笑しました。おそらく、海洋探検家の活劇映画をマジに撮ろうと思っていたアンダーソン少年の脳内シネマでは、気が狂わんばかりにカッコ良い「サーチ&デストロイ」が流れていたはずです。しかし、34歳のウェス・アンダーソンが思い描く海洋探検家は自らのチンチンをいじるのです。この「ズレ」が、作品全体を覆うオフビートなトーンとなって表れます
映画の中では、数々の海洋生物がヘンリー・セリック(「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」の監督!)の手による良い意味でチープかつ愛嬌のあるキャラクターとして登場しますが、リアリスティックに描かずに「作り物ですよ〜」として描くのは、アンダーソン少年では思いもしなかった手法であるはずです。そして、物語の最終目的である「ジャガーシャーク」というUMAを追い求める旅において、他人同士であるクルーがまるで家族のように結束していく様も描かれます。おそらくこのクルー達も、アンダーソン少年が妄想海洋スペクタクルでは、「各ジャンルに長けたプロ集団!」だったものが、34歳のウェス・アンダーソンの手によると「ちょっと可笑しな大きいお友達がコミュニティを形成していく」となる。これもある種の「ズレ」と言えるでしょう。あるいは「イイ歳した大人がチンチンをいじる」事に対して自覚的なウェス・アンダーソンの「どんなにカッコ良いこと言ったってチンチンいじってるんだぜ!」という「照れ」なのかも知れません(同様に「シティ・オブ・ゴッド」のハンサム・マネがポルトガル語で歌うデヴィッド・ボウイのナンバー*1も、「ズレ」であるし「照れ」でもあるでしょう)
最後になりましたが、私的に指摘(ダジャレ!?)しておきたいポイントを一つ。「ロイヤル・テネンバウムズ」の時は、「撮影法などで参考にした」と「キャッチ22」などを例に挙げていましたが、今回の「ライフ・アクアティック」も同監督マイク・二コルズの作品「イルカの日」からインスパイアされた作品なんだなぁ、と思いました

沈黙の世界 [DVD]

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キャッチ22 [DVD]

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ザ・ロイヤル・テネンバウムズ [DVD]

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このシリーズで出てるのか!この値段なら是非一家に一枚!!

*1:ボッサっぽい「レベル・レベル」に激しく嫉妬しました!