「あ、スイマセン『箪笥』を一枚…」

私も長い事映画を観て来ましたが、まさか窓口で「箪笥一枚」と言わされるとは夢にも思いませんでした。窓口のお姉さんに「箪笥は『一棹』です!」と指摘されてしまいましたが。ウソ。前振りが長くなりましたがスピルバーグが最高額でリメイク権を買い取ったという「箪笥」を観ました。核心にこそ触れませんが、どう書いてもネタバレに近づくと思うので、鑑賞を楽しみにしている方は読まないほうが無難だと思われます。
まず、これもやっぱり「ポスト・シックスセンス・シンドローム」で括られる「最後に突然卓袱台ひっくり返し型」の作品だと思うのです。
「アザース」でも「アイデンティティー」でも良いのですが、この手の作品は、例えば映画の尺が2時間としたら1時間40分ぐらいに突然「実はアナタは犬です!」と卓袱台をひっくり返されてしまうのです。でもって「え?犬?!何を突然・・・」と呆然としていると、1時間40分以前のエピソードを振り返り「ねっねっ!確かに犬でしょ!」と強引に説き伏せられ「そっかぁ…言われてみれば確かにお腹も空いてきたワン!」と納得してしまい、後はお茶碗やお箸を拾ったりの後片付けに終始する、といった感じ。
これらの作品の最大の弱点は、オチを理解してからそれまでの展開を振り返ると、そのどれもがミスリードを誘う「だけ」の為の物のように思えてきて、「果たして絶対にソレじゃなくちゃいけない、という必然性はあるのか?」という考えがドンドン頭をもたげ、結果的にはどうも損したような気分になるのです。その点、ビル・パクストンが初めて監督した「フレイルティー〜妄執〜」は、ちゃんとドラマを展開しつつ、オチでもちゃんと必然性のある卓袱台返しを見せてくれたので、上記のような作品がサスペンスの主流にある、という事を考えれば、特筆すべき作品ではなかったか、という思いが強固なモノとなりました。
「箪笥」に話を戻しますが、良かった点も幾つかあります。主役の姉妹の初々しい感じ。洋風と韓国風(?)がブレンドされたゴシック調の内装とか花柄の壁紙とか。お話がほぼその家だけで展開することや、主要な登場人物が家族四人だけしか出てこないのも中々良かったです。
お父さんを演じる柄本明似のキム・ガプスは「どっかで見覚えあるなぁ〜」と思ったら阪本順治の「KT」で暗殺団のリーダーを演じた人でした。