「ロード・オブ・ドッグタウン」を観ました(@109シネマズMM)。

昨年のリンダリンダリンダもそうでしたが、この映画もまた「無自覚な一瞬の輝き」を見事に描いている作品でした。青春映画の傑作だと思います

「リンダリンダリンダ」は、文化祭で女の子がブルーハーツを演奏するという、文字通り本当に“一瞬の輝き”を描いた映画なのですが、「ロード・オブ・ドッグタウン」の場合、サーフィンから自然発生的に誕生したスケートボードチーム「Zボーイズ」の栄枯盛衰を、三人の少年に視点を据えて描いています。Zボーイズは超絶テクニックで地方大会を数々と制覇、下火だったスケートボードブームは再燃し全米を巻き込んだ一大ムーブメントとなっていきます。当然、アンダーグラウンドからオーバーグラウンドへ浮上すれば色々とスーツを着た人たちがお金の話をし出すわけで、そこでスケートボードを抱えながら社会へ飛び出し、折り合いをつけながら上手くやっていく者もいれば、それを武器に「成り上がったるでぇ〜!」という者もいるし、そして一番才気に溢れながらもスケート以外のいわゆる“大人としてのルール”が面倒でドロップアウトしてしまう者がいたり。スケートボードによって深まった親交が、スケートボードによって遂には溝となってしまう、という切な過ぎる運命が3人を待ち構えます
高校時代、私の最寄り駅の側ではスーパーとスーパーの間の通路で夜な夜なスケートをしている一見おっかなそうな人たちがいて、目を合わせないように通り過ぎたモノですが、後に彼らとは同じクラスになり、HR/HMや当時流行だったグランジ、ミクスチャーなどの音楽を通じて仲良くなりました。彼らの何人かとは今だに交流がありますが、高校を卒業してから連絡を取っていない者も多いです。今や皆、30過ぎのオッサン。恐らくスケートを続けている者もいないでしょう。この映画の徐々に疎遠になっていってしまう3人を見て、そんな高校時代の友人達にしばし思いを馳せました
人間なら誰しも一瞬の輝きを放つ時期があるはずだが、それは顧みることでしか確認出来ない。だからこそ再検証の意味で、「語られるべき物語」として様々な実話を元にした映画が作られるのではないか。「ロード・オブ・ドッグタウン」に、そんな一つの回答を見た気がしました。



そして、この映画の元ネタになったドキュメント「ドッグタウン&Zボーイズ」も観ました。
レッチリの歌詞なんかにもよく登場するベニスビーチの遊園地POP(パシフィック・オーシャン・パーク)がさびれて閉園され、残された堤防によってイイ波がくるようになり、それによって地元ドッグタウンのサーファー達のスキルが上がった、とかいう話や、ウレタン製のウィール誕生がスケートブームの再燃に一役買った話とか、ドッグタウン周辺の小中学校は丘に点在していたため、学校の周りのコンクリートで舗装した斜面が格好の滑り場になった話とか、奇妙な偶然が必然を生んでいく様が面白かったです。ヘンリー・ロリンズやイアン・マッケイ、パールジャムのジェフ・アメンなどが当時のZボーイズやスケートブームへの熱狂っぷりを嬉しそうに語っています。このドキュメントでもやはり映画のメインの3人に焦点を当てていて、ガチに墨が入ったジェイ・アダムスのマジモンっぷりとか(ドキュメント撮影時は薬物所持で収監中)、ステイシー・ぺラルタの堅実っぷりっとか(「ロード〜」の脚本家であり、このドキュメントの監督でもある)、若い頃のトニー・アルバの映画に輪をかけてのロックスターっぷり/色男っぷり、等が印象的でした。当時のスケートブームの熱狂っぷり/企業側の入れ込みようをして「例えば今、ナイキが『街の全部使ってグラフィティしなさい!優秀な子には賞金をあげよう!』とか言い出すようなモノ。全く持って異常だった」という発言から、いかに皆が浮き足立っていたかがよく解るような気がしました。
ドキュメント制作というのは実は照れ隠しで、疎遠になってしまった3人及びZボーイズのリユニオンを目論んだのが堅実派ステイシー・ぺラルタだった。そんな話だったら、イイ大人の男の子の不器用っぷりがちょっと泣けるなぁ、なんて思ったりしました。

DOGTOWN & Z-BOYS [DVD]

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109シネマズMMでは、1月13日まで「ロード・オブ・ドッグタウン」「ドッグタウン&Zボーイズ」を上映しています。
http://109cinemas.net/mm/index.html