「ドッジボール」を観ました(@TOHOシネマズ川崎)。

「一発ギャグの為に重要なキャラクターが死ぬ」ぐらいにはユルい映画なんですが、個人的には大いに楽しみました。というか、ほぼ「ズーランダー2」というか「マヌケなフランク・TJ・マッキー(マグノリア)のスピンオフ」といった仕上がりで、完全にベン・スティラーの一人相撲なのですが。
恐らくこうした「キャラの立った人のボケ倒し」に免疫のあるアメリカではボックスオフィスで1位になるくらいにはドッカンドカンうけていたとは思うのですが、私が観た劇場では「クスクス笑い〜たまに大きな笑い」といった程度。改めて笑いに対する日米格差を感じると同時に、真夜中の弥次さん喜多さんって実は凄い映画だったんだな、と思い直させてくれる映画でもありました。
アメリカ人の場合、「ズーランダー」やら「スタハチ」やら「メリーに首ったけ」といった、これまでベン氏が演じてきた映画を大抵観てるというか、観ていなくとも彼がどんなポジションにいるかがわかっています。つまり「この人が色々と面白いことやる」という予備知識があるのです。ところが、日本の場合はそうではありません。もちろん、ベン氏がどういう俳優でどういうポジションにあるか、解って映画を見に行く人も少なくはないでしょう。でも、私が観たシネコンにおいて、そういった層は完全にマイノリティといった雰囲気がありました。つまり「ドッジボールを題材にしたコメディ映画」を期待して観に来たお客さんが大半であったというか。そこへ突然、「変な口髭の外人が延々ボケ倒す映画」を見せられては、少々キツイものがあったのではないか、と想像せざるを得ません。
で、宮藤官九郎の評価すべき所は、「日本人だけが笑えるコメディ映画」を初監督にして作り上げてしまった、という点に尽きるでしょう。もちろん、ベースにある一連のクドカンのドラマやら、大挙して出演しているゲスト陣やら、しりあがり寿の原作やらに関する情報があった方が作品をより楽しめるとは思うのですが、「弥次喜多」上映時の客層を見ると意外にも年配のお客さんが多く、到底「クドカン作品を期待して観に来た」とは思えないような、その方々がむしろ積極的に笑っていたのがとても印象的でした。つまり、松尾スズキのことを知らなくとも「ヒゲのおいらん」は充分面白い、ということだと思うのです。
仮に「弥次喜多」の全米上映が決まったとして、ある程度の笑いはおきるでしょうが、日本のようにウケが良いとは到底思えません。もちろん、「弥次喜多」には、単なるコメディに終わらない、「リアルに感じられないリアルより、リアルに感じられるアンリアルの方がよっぽどリアル!」といったような様々な解釈が出来るテーマを扱った作品ですし、単純明快な(褒めてる)「ドッジボール」と比べるのは何なのですが、「日本でナンセンスギャグを映画に持ち込んで成立させてしまった」という宮藤官九郎の功績は大きいのではないか、と改めて思いました