好き好きバタヤン。
春ですね。春といえば新たな生活が始まるシーズンであり、同時に別れのシーズンでもあります。よって不動産屋や引越し業者は繁忙期でもあるわけですね。そんな折、相米慎二の「お引越し」のビデオを300円で保護致しました。
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 2002/11/22
- メディア: DVD
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田畑智子ファンのくせにデビュー作を見ていないとは何事か!と自分自身を奮い立たせ鑑賞しましたが、いやこれ、傑作でした。
物語は母:桜田淳子、父:中井貴一、娘:田畑智子という家庭の、ぎこちない夕飯のシーンから始まります。父と母は別居が決まっています。父が今の家を出て行くことになり、小学6年生の娘は母と共に残ります。しかし、どうやら娘は、母より父の方が好きなようです。そして、そんな両親の身勝手な別居を機に、娘は学校で問題を起こすようになります。元々良い精神状態にあったと言い難い母は「何故言う事を聞けないの!?」と、娘に対して暴走を始めてしまい・・・というお話です。
まず、全編通して田畑智子が素晴らしいです。当時11歳、彼女からみなぎる「THE☆キラメキ」は、様々な困難に直面し「もうイノセンスなだけではやっていけないのかも…?」と薄々感づき始めた、この時期の子供が内包する特有のモノでしょう。そして、その娘と対をなす母親役の桜田淳子も素晴らしく、ジョン・カサヴェテスの「こわれゆく女」でのジーナ・ローランズを彷彿とさせるような「イタイお母さん」を熱演しています。
精神的に不安定な母親を「そんなお母さんもアタシも、同じ女」と娘が受け入れるまで。両親の別離という通過儀礼を経て、成長する/せざるを得ない、一人の少女の一瞬の輝きを、相米慎二は見事に切り取っています。やはり惜しい人を亡くしたなぁ、と再認識した1本でした。