オレ音楽史回顧録映画

Dirk_Diggler2004-04-11

「ロック・スター」を観ました。

まず簡単な筋を説明してしまうと、
「イギリスのバンド『SteelDragon』の熱狂的なファンである主人公のクリスは、ひょんなことからバンドの新ヴォーカルに大抜擢されて・・・まぁ色々あったわけですよ」
という映画なんですが、ちょっと納得いかない点が幾つかあったので書き記しておきます。
この作品は80年代メタル回顧録としてそれなりに楽しい場面もあったりするんですが、最終的に主人公は「ゴリゴリのメタル好き」という自分の拠り所を簡単に放棄して、いわゆる「グランジ/オルタナ」と表されるようなパール・ジャムの出来損ないのようなバンドに辿り着くわけです。
「あの頃は若気の至りだったけど、今は本当の音楽をやっているから」とか何とかぬかしてやがる!!
そりゃあ「2001年の時点でロック語る」という観点からいえば、90年代初頭に吹き荒れた「グランジ/オルタナ」ムーブメントも範疇にした、そうした結論に至りたくなるのは良く解る。
でも、どうして「80年代メタル万歳!」という点に重きを置いた「若気の至り大肯定映画」にしてくれなかったのか?劇中のバンド「SteelDragon」のメンバーには、ギターにザック・ワイルド、ベースがジェフ・ピルソン、ドラムはボンゾの息子、といった具合に、ガチガチな面子を揃えているのに!!
思うに、まだ「グランジ/オルタナ」を語るには早すぎるんではないか?と。だっていまだにニッケルバッグやパドルオブマッドみたいなバンドがメインストリームで大人気なわけだし。(余談ですが、どうやらガス・ヴァン・サントカート・コバーンをモデルにした映画を製作しているそうです・・・「どうひっくり返ったって絶っっっ対に上手い事行くはずないから、どうか本当にそれだけは止めてくれっ!!」と「たのみこむ」にボートしたい気分です・・・)。
そして、何より一番問題なのが、この作品のどこか冷めた感じ。「80年代メタル」「グランジ/オルタナ」の両方を語りながら、その両方に愛情が感じられない所。お前は自分が撮った映画「ビルとテッドの大冒険」を忘れてしまったのか??!ヘイ!デュード!!スウィートじゃないぜ!!(c ゾルタン星人)
http://us.imdb.com/name/nm0378893/
上記の通り監督のスティーヴン・ヘレクは58年生まれだから、80年代は現役でHR/HMの最盛期を体験しているハズだが、本当はデートに合わせてケニーGなんかを聴いていたような腑抜けた野郎だったんではないか、と。「グランジ/オルタナ」に関しては間違いなく「流行ってるからなんとなく聴いてみた」という感じが見え見え。
自分は74年生まれなので、HR/HM最盛期の最後っ屁と、それから主権移行とも言えるグランジ/オルタナの洗礼をモロに受けている。つまり、モトリークルーのベスト盤「ディケイド・オブ・デカダンス」とニルヴァーナ「ネバーマインド」を、同時期に同じ価値観でウォークマンにしのばせ高校に通っていた世代なのである。
そして、やはり同時期にレッチリ「BSSM」やパンテラ「俗悪」やビースティ・ボーイズ「チェック・ユア・ヘッド」といった、現在の「ミクスチャー」「ヘヴィロック」「ヒップホップ」というシーンの礎を作ったバンドの歴史的な名盤を、やはり「同時期に同じ価値観で」聴いていたりするのである(この辺の話はいずれまた)。だからこそ、この映画の、この時代のロックの描かれ方に関しては「ムネニイチモツ、オアリノゴヨウス・・・」なのである。
話がそれてしまいました。つまり何が言いたかったかと言うと、「ロック・スター」は、明らかに失敗作なのだが、自分と同世代で同じような音楽体験をしている人たちには
「面白いよ。DVDを買う価値はないけどレンタルで見る価値は大いにあり」
と薦めたい映画なのであります。