2011年度オスカー候補・受賞作の備忘録(ノレた編)
「ヒューゴの不思議な発明」 撮影・美術・視覚効果・音響(編集・調整)賞受賞 作品・監督・脚色・作曲・衣装デザイン・編集賞ノミネート
「アーティスト」よりは断然にサイレント期の先人たちに払った敬意が伺える映画だが、問題点がないわけでもない。
「アーティスト」同様、メディアの変遷とその主軸にいた男の栄枯盛衰を描いた物語だが、所謂「見世物」的なサイレント映画が「○○」によって忘れられた、というのはあまりにも嘘っぽくはないだろうか?現に「○○高揚映画」というジャンルで、現場に監督がバリバリ借り出されていた事実だってあるわけだし。
役者陣で最大の収穫はサーシャ・バロン・コーエン。彼の屈折の原点となった幼少期に大人は涙し、彼が纏う蒼い制服に子供は恐れおののく、という非常に効果的な構図となっている。その他では一瞬写っただけで「元・女優」であること雄弁に語るヘレン・マックロリー(ママ・ジョルジュ役)が素晴らしい。あとはメリエス本を出した学者の人は自分の著作の貸し出し状況をチェックしすぎだと思う。
「月世界旅行」といえばやっぱり世代的にはスマパンのこのPV↓
「戦火の馬」 作品・撮影・作曲・美術・音響(編集・調整)賞ノミネート
なんだかんだで一番バランスが取れていてオスカー向きといえる作品が無冠に終わったというのは、他作品との兼ね合いが悪かったとしか言いようがない。冒頭の「荒れ地を開墾する」というだけのシーンをあれだけ面白く見せてしまうスピルバーグの力量を、2時間半に渡ってたっぷりと味わうことができる良心的作品。
「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」 助演女優賞受賞 作品・主演女優賞ノミネート
現実は多分、映画よりもっと酷かったはずだし、あの後にやって来るであろう嵐のことを考えると、そこで終わりで良いのか?という気にならなくもないけど、それにしたって今売れっ子の女優さん達を起用して、映画にして新世代に語り継いでいくということには100万回のゴメンナサイより意義があるのではないのだろうか。
親子二代、下手したら三代に渡って「裕福な白人家庭に仕える」という非常にハードな現実を、親メイドが我が子を新米メイドとして送り出すバスのシーンなどのように、実際にああして個々のエピソードとして切り取ることの重みを強く感じた。
同じ黒人のメイドに育てられても、差別と偏見に満ちた大人になることもあれば、逆に人種に分け隔てなく接して母親よりも育ての親である黒人メイドを慕うような大人に育つこともある。人種の問題を取っ払うと、ここに描かれているのは母と娘の関係を軸にした「普遍的な女性の近親憎悪の感情」のようにも思える。