2011年度オスカー候補・受賞作の備忘録(ノレず編)

「ドライヴ」 音響(編集)賞ノミネート

各所で凄く評判が良いようだが全然ノレなかった。「仕事説明」といった感じのアヴァンタイトルが面白かったので結構期待したんだけど、後は監督が思い描く「このバイオレンスシーンがすごい2012」みたいなクリップ集のように感じてしまって興ざめ。
要は(単純に好みの問題だけど)何か「スカしてる」感じが鼻について、お前そんなに暴力映画好きでもないだろー、という印象が一番強く残った。こういう借り物っぽさも、その作品を構築する上で有機的であれば、ああ、そのゲンノウで手をメッタメタにするのは『カジノ』ですよね、とか、ボッコボコに蹴られる男をその男目線的なローアングルで撮るのは『グッドフェローズ』があるけど武が『その男、凶暴につき』で「オレがやった方が先だもんね」と豪語したヤツですよね*1わかります、とかも思わないし(思ってるじゃん!)、そうしたパスティーシュでも全然構わないと思うんだけど、ヤクザが(いくらが自分の息のかかった店とはいえ)店内で突然人を刺すとか、ベースとなってる作品世界の雑な所が散見されて萎えた。これ見よがしなフラッシュフォワードとかも全然意味わかんない。

感心したのは、「トラブルの元凶」となる人物を演じるオスカー・アイザックの変貌ぶりが凄まじく、指摘されるまで彼だと気付かなかった。ファンの人は彼を観に行くだけでも一見の価値はあるかも。


「アーティスト」 作品・主演男優・監督・作曲・衣装デザイン賞受賞 助演女優・脚本・撮影・美術・編集賞ノミネート

これも「ドライヴ」と同じで全然ノレず。サイレント映画黄金期には扱われなかった(であろう)メタ要素だとかメディアの変遷だとかを、サイレント期のスタイルでやるのは良いけど、それを取り入れたことでそれ自体がノイズになるようなら、一体それをやる意味はどこにあるのか?と思ってしまった。このストーリーラインであれば、去年の「チコとリタ」のようにジョージとペピーに「鶴八鶴次郎」をやらせて、なおかつスター俳優の栄枯盛衰〜復活モノでやるべきだと思うんだけど、そこすら押さえれてないのに革新的なことに挑もうとした結果、こういういびつな映画になったのではないだろうか。「サイレント映画」愛、というよりは「サイレント映画=クラシック好きのセンスの良いオレ」愛、といった感じ。「落下の王国」とか「ロード・オブ・ドッグタウン」を100回ぐらい見直せ、と言いたい。


次回は「ノレた!編」です。

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*1:実際に「その男、凶暴につき」の方が早い