笑ってはいけない極寒の雪山「エッセンシャル・キリング」


ヴィンセント・ギャロ演じるアフガンゲリラが米軍に拘束され→拷問を受け→恐らくはもっとハードな拷問をするために別の刑務所へ移送する際、事故で車が横転→どこだかよくわからない(東欧?)の雪山に放り出される。ここまでがプロローグで、以降は本筋である台詞を排した逃亡劇となる。
デデーン!「ヴィンセント、アウトー」と、藤原マネージャーの声こそ響かずハリセンを持った米兵も登場しない。だが、雪山を逃亡する際の幾重にも連なる不条理は、徐々に悲惨さよりも可笑しさが増していく。数々のトラブル、そしてその対応が、コント的な色合いを帯びていくと、ヴィンセント・ギャロ演じるムハンマドは、その不条理さからも逃げるように、朦朧とする意識の中で故郷を回想する。
そこには「汝の災難を受け入れよ」といったような内容のコーランが流れ、それに合わせるように彼がこれから行う「エッセンシャル」な「キリング」の断片がフラッシュフォワードとしてインサートされる。恐らくは妻(?)が纏う青いローブが象徴的に映し出され、彼はこれを雪山でも幻視する(イスラムの青は「神聖さ」などを表す)。
色彩設計で言えば、上記画像のような「赤・白・黒」はイラク国旗の色であり、ここに緑の文字で「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」を加えたものが正式な国旗となる。

聖なる色で繁栄の象徴である「緑」を排したのは何故か?と思ったら最後にひょっこりと顔を出すアレが、正にそうなのだろうか?とか、あることないこと色々と深読みしてしまった。