オーソン・スコット・カード「無伴奏ソナタ」

ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作『エンダーのゲーム』の原型となった中篇を収録する傑作集。
生後六カ月で音とリズムに対する天分を認められ、二歳にして音楽テストで神童と評されたクリスチャン。かれは森の奥深くで人工的な音、他人の音楽を禁じられて育てられた。聴くことを許されたのは鳥の歌、風の歌、雷鳴など自然の奏でる音楽だけだったが……禁じられた音楽を聴いてしまった天才音楽家の運命の変転を描く表題作、無重力戦闘室で命がけの戦争ゲームを展開する11歳の指揮官を迫力ある筆致で描く、同名長篇の原型となった中篇「エンダーのゲーム」など、ファンタジイからハードコアSFまで、独創的なアイディアと奔放華麗な想像力で、あらゆる読者を魅了する傑作11篇を収録! 《ハヤカワ・オンライン解説より》

長編の方の「エンダーのゲーム」も積んであるのですが、元となった短編の方が実は出来が良い、という感想をネットでチラホラと目にしたので、まずは短編集のコッチを読んでみました。そうしたら驚いた。「エンダー」ももちろん面白いのですが、他の短編がどれも物凄く面白くて、音楽で言うならいわば本作は「捨て曲ナシの名盤」といった感じ。作風もそれぞれの作品によって多種多様な顔がうかがえ、尚且つどれも最後にカッチリと落とす。感服です。それぞれを紹介すると・・・

  • 『エンダーのゲーム』 こども店長で是非映画化を
  • 『王の食肉』 打って変わって人喰い小説!切り株の山!!
  • 『呼吸の問題』 オカルト。「アンブレイカブル」と「ノウイング」の元ネタ?
  • 『時蓋をとざせ』 タイムスリップ物プロットの、こんなカッコ良い使い方があったなんて
  • 『憂鬱な遺伝子を身につけて』 メルド!
  • 『四階共同便所の怨霊』 松本人志的不条理コントに始まり、戦慄のオチに突き進む!
  • 『死すべき神々』 斬新な宇宙人観
  • 『猿たちはすべてが冗談なんだと思いこんでいた』 壮大な擬似惑星ドラマ。後半のハイライトか。
  • 『解放の時』 これまたシャマランのアレ(出世作)っぽい。
  • 『磁器のサラマンダー』 バギーちゃーーーん
  • 『無伴奏ソナタ』 抗えない本能vs管理社会。ガンカタのない「リベリオン」?

個人的に面白かったのは、『時蓋をとざせ』『四階共同便所の怨霊』『猿たちはすべてが冗談なんだと思いこんでいた』『磁器のサラマンダー』辺り。『猿たち〜』は、消え行く運命のアフリカの小国から始まり、テラフォーミングへと話が進むので、ちょうど先日読んだ『キリンヤガ』(→感想)を思わせました。
『磁器のサラマンダー』は20ページにも満たない短編ですが、これがもう本当に本当に素晴らしくて、電車で読んでいるにもかかわらずボロボロ泣いてしまって恥ずかしかったです(しばらくずっと下を向いてた)。
で、長いことSFファンの間で話題になっていた「エンダーのゲーム」映画化ですが、ワーナー製作、ヴォルフガング・ペーターゼンが監督で始動したのかと思いきや、やっぱり難航しているようです。

デヴィッド・ベニオフが脚本、マーク・フォースターが監督という話もあったけど、どうやらそれも流れちゃったようですね(ベニオフなら結構良い仕事すると思うんだけど・・・)。