MOS DEF 『THE ECSTATIC』


ソロとしては4枚目、モス・デフのニューアルバム。【ecstatic】→「我を忘れた、恍惚とした」というキーワードをアルバムのタイトルに冠していますが、これが文字通り聴いていると得体の知れない熱気のようなものがジンワリと溢れ出す素晴らしいアルバムです。ヒップホップでは久々に大当たりという感じで、昨年のエリカ・バドゥの傑作アルバムを思わせるような、ドス黒く心地好いグルーヴに満ちた好盤となっております。
エリカ様のアルバムにも今回のモスデフ「ecstatic」にも関わっているキーパーソンとして、マドリブのクレジットが確認できますが、彼の趣向なのか、インド〜中近東といった趣のエキゾチックなテイストが随所に見受けられ、そこに(歌3:ラップ7)といった感じで益々円熟味を増したモス・デフのフロウが乗る、という、その手の音が好きな者にとっては正に悶絶モノのアルバムとなっております。
まぁ能書きはこれぐらいにして、ざっと全曲紹介しますと…
M-1.Supermagic のっけから「メリーポピンズ」に唾するようなラップに絡まるエレキギターのループ。トラックはOh No。
M-2.Twilight Speedball なんと相棒抜きでチャド・ヒューゴ名義のトラック。ちょっとファラオ・モンチの「ゴジラ」ネタのあれっぽくもあり、ソウルアサシンズ風の「プイィ〜」というギターが良い感じ。
M-3.Auditorium インドっぽいというか初期ウータンっぽいというかRZAっぽいトラックに身を委ねていると、そこにスリック・リックの低血圧フロウが…!マドリブ曲。
M-4.Wahid ストリングス風のシンセ、チープなリズムマシンの音色を上手くミックスした、これまたボリウッドっぽいトラックで、これもマドリブ曲。
M-5.Priority 哀愁あるピアノとトランペットのループがカッコ良い。曲はDJ Preservation(すいません知らない人です)。
M-6.Quiet Dog ハンドクラップがメイン、ミニマルながらアップリフティングなクールなトラック。これもPreservationさん。
M-7.Life In Marvelous Times YouTubeなんかで去年辺りから上がってた80'sエレクトロっぽい曲。単体で聴いた時はちょっと微妙かな?と思ってたけどこの流れで聴くと不思議と良く聴こえる。トラックはMr.Flash。
M-8.The Embassy これまたインドっぽいストリングスとシャリシャリした金物系の音、フックのあるベースライン。トラックはMr.Flash。
M-9.No Hay Nada Mas ハープやアコギのループにスペイン語のフロウ!これもPreservation。
M-10.Pistola ヴァイヴのループが凄く気持ち良い。トラックはOh No。
M-11.Pretty Dancer ベースラインが太くてスモーキーなリズムトラックに、抜けが良いヴァイヴの被さる、いわゆるMadlibっぽい曲。
M-12.Workers Camp(Mr. Flash)
M-13.Revelations(Madlib)
M-14.Roses(feat&prod.Georgia Anne Muldrow)
M-15.History(feat.Talib Kweli)(J Dilla)
M-16.Casa Bey(Preservation)
この終わりの5曲ぐらいの流れはちょっと凄い。今回のアルバムは曲自体が全体的に少し短めで(アルバム全部でも45分ぐらいでサクっと終る)、もしかしたらミックスアルバムっぽい構成を意識して作られたのかも知れません。特に最後の3曲、ストーンズ・スロウでは女性初のレコードディールを有するGeorgia Anne Muldrow(契約当時22歳!!)をフィーチャーしたM14、盟友タリブ・クゥエリを配したディラ曲のM15、そして最終曲、先行シングルにもなっていたフュージョンっぽいトラックのM16になだれ込む展開は鳥肌モノです。
とりあえず、今年になって一番聴きこんでいるアルバムかも知れません。ヒップホップに苦手意識がある人にも、十分アピールできるだけのポテンシャルは有している、凄く良いアルバムだと思うので、これは売れて欲しいナァ(でも、アートワーク、カッコ良いけど如何せん地味なんだよね…)。

  • Casa Bey PV(埋め込みNGなのでダブルクリックでどうぞ)

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