デイヴィッド・ベニオフ「25時」

局所的に盛り上がるベニオフ熱!短編集「99999(ナインズ)」に続いて(→感想、デイヴィッド・ベニオフのデビュー作の「25時」を読みました。

25時 (新潮文庫)

25時 (新潮文庫)

物語の主人公:モンティ・ブローガンは麻薬の売人。彼が麻薬所持で逮捕され、そして刑務所に収監されることになる前日。その一日を、彼の恋人や友人、そして彼の父親との心の交流を描く群像劇。デビュー作にしてこの力量!発表時はちょっとした事件だったのではないかな?と思います。ある関係が終わりを迎える、その一日の物語です。
これは公開時(2004年)に映画を観ていました。概ね良い作品という印象を持ったのですが、9.11的なモチーフが、「NYを愛するニューヨーカー(本作の監督であるスパイク・リー)が物申す!」とばかりに我先に腫れ物に触った、いや、触らなければ!という感じの使命感として導入されていたりして、個人的にはちょっと引いてしまった憶えがあります(何か「大いなる陰謀」じゃないけど、もう部外者はシューンと傍観するしかなくなっちゃうような感じ)。その点がちょっと「物語としての映画」の鑑賞を妨げてしまっているような感じがしました。
で、今回原作を読んでみて改めて感じたことは、この作品を映画化するにあたってそういうテーマを加えると、かえってテーマの相殺になるなぁ、ということ。映画を観た時の第一印象として「プッシャーのくせに何を繊細なことをウジウジと!」と思わずにはいられなかったのですが、原作では彼がそんな道を歩んできてしまった過程や心情など(引き返せたかもしれない分岐点のこと、自分の彼女がチンコロしたのでは?と一度でも疑ってしまった以上、もうどうやって以前と同じような関係を保てようか?など)、主人公モンティの内面描写も克明に記されていて、9.11モチーフを取り入れるならもっとこうした面にもっと光をあてたり、彼のことを周囲の近しい人々はどう思っているか?といった辺りをもっと突っ込んで描くべきだよなぁ、と思いました。
まぁでも、もう4年も前に観た映画なので見返したら「いや、そんなに悪くないかも…」とかアッサリ前言撤回するかもしれません。モンティの彼女役を演じるロザリオ・ドーソン様の美しいお姿を再度拝見するためにも、機会があればまた観直してみたいと思います。

25時【廉価2500円版】 [DVD]

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