女囚ピアニスト・二百四十秒の復讐 〜4分間のピアニスト〜

4分間のピアニストを観ました(@109シネマズ川崎)。

事前に見ていた予告編(コピーが「弾く時だけわかる。何のために生まれてきたか。」だって)や、ポスターのイメージなどから想像する“いわゆるスカした単館系映画”と、ちょっとあまりにもかけ離れていた作品だったので、勝手に70年代東映モノっぽい邦題を考えてみました(極太の筆字でお願いします)。
ドイツのとある刑務所。囚人にピアノを教える教師として赴任してきたトラウデ・クリューガーは、所内で一人の女性と出会う。彼女の名はジェニー。かつては将来有望な天才ピアニストだったが、現在は職員や他の囚人とのいざこざが絶えることのない荒れた刑務所暮らしの日々を送っている。ジェニーの演奏を目にし、彼女の才能を確信したトラウデは、反抗的な彼女を何とかして鍛え直し、コンクールに出そうと画策するが・・・というお話。
「反抗的」と上でサラっと書きましたが、このジェニーの振る舞いが中々のモンでして、初っ端から看守をフルボッコで半殺しの目に遭わすわ、素手で鏡は叩き割るわ、ガラスに体当たりしてビルから飛び降りて逃げようとするわ、等々、生粋のパンクスっぷりを披露。ジェニーを演じるハンナー・ヘルツシュプルングは、破壊屋さんのレビューによると「この映画のために半年間のピアノ訓練と凶暴さを出すために三ヶ月間のボクシング訓練を受けたとのこと」だそうで、その効果は絶大だったんではないかと思える粗野で剥き出しな感じを上手く表現していると思います。

何故、彼女がそれほどまでに「ハンドル・ウィズ・ケアー」な存在になってしまったのか。それは劇中で語られますが、彼女が周囲に纏わり付くあらゆる柵から決別しようと、クライマックスのコンクールのシーンで演奏する怒涛のピアノ演奏が本当に凄いです。こうした「決勝戦モノ」で見せる大技って、大概予想が付いたり、こんなモンかー、と思ってしまう事が多々あるんですけど、ああいうハッタリで上手く魅せつつ上手く紡げる監督の手腕に感心しました(結局メロディが○○○にひれ伏すのかよ!って怒る人もいるでしょうけど)。
ただ難点が無い訳でもなくて、随所で交差してくる老教師トラウデの暗い過去が、引っ張った割りにはそんなに大したオチでもなかったり、丁々発止とした訓練シーンがもっとあっても良いと思うし、クライマックスの直前に緩急とか致命的な欠点がありつつも、最後の最後の演奏シーンのインパクトが全部吹き飛ばしてくれるので、結果的にそんなに気にならなくなっています。

ジェニーを演じるハンナーちゃんは1200人の中から選ばれたシンデレラガール。映画の雰囲気とは違う普段の感じはドイツのドリュー・バリモアといった感じでしょうか。

重苦しく深刻になりがちなテーマを、随所に絶妙なギャグを入れてバランスを取る辺りに監督であるクリス・クラウスのセンスを感じました。この「4分間のピアニスト」がまだ監督2作目だそうなので、今後が非常に楽しみです。