オイラが叩けばお客を呼ぶぜ 〜BATTLES@LIQUIDROOM〜

先週の金曜日、バトルズのライヴに行って来ました。

驚くべきは22時からのライヴが「この日、2度目のライヴ」ってことですね(初回は19時から)。 昼夜ならぬ夜・夜2回公演!アイドルか!しかし、それであのテンションってどういう事だ?!という凄まじいライヴでした。
まぁライヴの印象は主にドラマーのジョン・ステイナーのプレイ、これに尽きると思うのですけど「バトルズ=ステイナー」という図式が明らかになったライヴでありました。よく人力ドラムン・人力ブレイクビーツとかいうけど、ステイナーの場合は彼が“マシン”。彼自身が機械でした。リズムキープはガチガチ、それでいてオカズの入れ方も絶妙、でもって音の強弱も完璧(耳元で爆竹が破裂したような、それホンツにスネアか?!と疑いたくなるような凄い音)。ドラムセットはステージ中央、しかも一番前に陣取っていて、彼のプレイが一番盛り上がる、ってのも何だか妙な感じがしました。曲が盛り上がるタイミングもほとんど彼のブレイク待ちだし、というか、今回のライヴでよく解ったけど、「MIRRORED」のほとんどの曲がそういう風に構成されている。
先日発売されたPREFUSE 73のアルバムにステイナー氏がドラムでfeatされていますが、その曲を聴いてバトルズというバンドがステイナーのドラムに重点を置くその理由が、物凄くよく解った気がしました。90年代後半〜00年代に入ってからのビートクリエイターの目差している点に「如何にして生っぽいループを組むか」というトピックがあると思います。サンプリングでこしらえたビートを、ただループさせるだけでは味気なく、「ああ、サンプリングだな」とすぐに飽きられてしまう。そうならないように音の強弱にアクセントをつけたり、ループのさせ方/どのフレーズを切り貼りするか、などと試行錯誤を繰り返す。簡単に言ってしまえば、生演奏との差別化を図る意味での「ビートのメリハリ」的な表現を、ジョン・ステイナーという男は生演奏でやってのけている、という印象を強く受けました。
淡々と8ビートを刻んでいたかと思えば「過剰な感じのタム回し」だとか、「ブラストビート風にキック・スネアを連打」だとかが、本当に唐突に盛り込まれる。それらのフレーズが、まるでサンプラーのボタンを押したかのように恐ろしいほど正確なタイミングと正確なサジ加減で繰り出される。これだけ叩けるドラムを生かす「上モノ」、ってどんな音なんだろう?とライヴ中ずっと考えていたのですが、それは、いわゆるポストロック的インプロをベースにした、タイヨンダイ、イアン、デイヴの3人が繰り広げる音に他ないのかな、とも思いました。
ギター、ベース、シンセなど使用し、有機的に発した音を、ディレイを多用し無機的な音に変換(それは個を取り除く作業ともいえる)、それをマシンと化したドラマーが無機的に繰り返す有機的なビート(サンプリング的奏法)の上に乗せる。こうしたアンビバレントなバランス、その脆いバランスはバンドにスリルをもたらし、簡単には形容できないバトルズというバンドの不思議な魅力の一因を形成しているのでしょう。

  • Battles - Tonto


 
追記:生で見たジョン・ステイナー氏はちょっと上記画像のハリウッドスーパースターと似ていたような気がします。