「エッフェルタワー ネズミと僕と、時々、幽霊?」 〜レミーのおいしいレストラン〜

レミーのおいしいレストラン」を観ました(@TOHOシネマズ横浜)。

冒頭、画面がストップモーションになって「これがボク」みたいなネズミのレミーのナレーションが入る所で「あ、これは信頼出来る」と思ったら、やはり期待を裏切らないクオリティーの作品だったので非常に満足しました。
ふとしたことから憧れのシェフ:グストーのレストランに辿り着いたレミー(ネズミ)が「自分ならもっと良いスープを作れるのに!」と、ズンドウにハーブをガンガン投入していくシーンを見て「…これ『パフューム(感想)』じゃんか!」と思いました。『パフューム』とこの作品に共通するのは「(自覚のある)天才の物語」という点なのですけれど、一番の違いは調香師グルヌイユには完全に欠落していたモラルや義理人情が、料理好きのネズミにはあるという点(しかも、一番マトモな感性を持ち合わせているのが人間を差し置いてネズミ、という皮肉)
「才能を兼ね備えた者が、身代わり的にそうでない者の手助けをする」という観点でみれば、これはシラノ・ド・ベルジュラックでもあるわけで、その点で言えば「定型のお話に革新(料理上手のネズミ)を掛け合わせる」という、まさにピクサーらしい作品と言えるでしょう。
忌み嫌われる対象であるネズミが街に出て行けば、ネコ型ロボットならずとも「ギャー!ネズミ!」となるわけで、だがしかしそこに「みんなを料理で喜ばせてるのに何故こんなに嫌われなければならないんだ!?」という葛藤は全然なく、料理が出来ないリングイニにも(恐ろしいほど)葛藤はなく、葛藤があるとしたら鶴の一声で店を恐怖のどん底に陥れる料理界の重鎮批評家:イーゴ(ピーター・オトゥール)にあり、そんな彼が葛藤を乗り越えていく、という大団円が非常に興味深かったです。

追記:「愛しのロクサーヌ」ってDVD化されていないのですね。