困った時の「ナントカとHIP HOPの融合!」 〜レッスン!〜

「レッスン!」を観ました(@渋谷シネマGAGA)

ニューヨークで社交ダンス教室を開いているピエール・デュレイン(アントニオ・バンデラス)は、ある晩、車をメチャメチャに破壊する高校生に出くわす。あるきっかけでその生徒の学校を突き止めたピエールは「生徒たちに社交ダンスを教えたい」と校長に申し出る。案内されたのは、校内の落ちこぼれが集められた問題のクラス。当初はピエールを相手にせず、ダンスと言えばヒップホップにしか興味を示さなかった生徒達。そんな彼らも、ピエールの熱意に押され、次第に心を開いていくのだが…というお話。
師弟・教示モノ、不良生徒と熱血先生モノ、そしてズブの素人がツワモノに挑む挑戦モノ。もうどれも手垢にまみれたジャンルを1つの作品にブチ込みつつ、それを新鮮に見せようと盛り込まれた要素が「HIP HOPと社交ダンスの融合?!」というマッシュアップ
ヒップホップなどのストリートから生まれたダンスと言えば、1人ないし2〜3人が前に出て、その他の人々は周りで囃し立てる“観客”のようなポジションになるという、非常に個人主義的なモノ。これには厳格なルールはないし、前に出たい奴は出れば良い。しかしながら、一見「自分の方が上手いと感じた奴はドンドン挑んでいけよ」的な自由主義溢れるダンスの様に思えますが、下手なダンスをかませば「空気嫁」的なブーイングも飛び交うであろう、実は非常に内輪ノリな閉鎖性も感じられるようにも思えます。
対する社交ダンスが命題にするのは、一言で言えば「調和」。それは組む相手との調和でもあるし、流れる曲との調和でもあるだろうし、決められた枠の中で踊りを表現するという、個と型との調和でもある。特定の縁者にスポットライトを当ててみせるヒップホップのダンスを個人主義とすれば、大会で数組のカップルが流麗に踊りながら、流れを崩さずにその中で技巧を競う社交ダンスを全体主義的と見ることも出来るでしょう。
では、そうした異なる二要素が交わると、一体どういったモノが出来上がるのか?生徒たちが社交ダンスに理解や興味を深めていく中での折角のクライマックスのコンテストのシーンで、出てきた答えが、(リスペクトやオマージュという思想を欠いた)「でもやっぱりオレ達のダンスはヒップホップだぜ!」という程度に収まってしまうのは、ちょっともったいない気がしました。

しかしながら、教師役のアントニオ・バンデラスが素晴らしいし(あんな役を嫌味なく出来るなんて!)、生徒たちもキャラの立った子が多いので、単純に娯楽作として観れば楽しい映画だと思います
生徒の一人に、金子貴俊に凄く似ている子がいて気になりました。