“硫黄島協会”が行く! 〜硫黄島からの手紙〜

「硫黄島からの手紙」を観ました(@109シネマズMM)。
まずは、以前引用した粉川哲夫氏による父親たちの星条旗のレビューより、イーストウッドが「伝統的な右派」であるという点。

地域や伝統を重視し、全国的な統制には反対する。国を愛するのは、地域を愛するがゆえであり、彼らにとって、国家は、地域を一つに(均質に)統合するためのものではなくて、あくまでも地域と地域を連合させ、ネットワークするものとしてあるべきなのだった。

このイーストウッドの硫黄島二部作には「『星条旗』がメイン、ついでに『硫黄島』も撮った」「いやいや『硫黄島』がメインで『星条旗』がおまけ」と諸説あるようです。「星条旗」が上記の点を踏まえながらその先に渦巻いていた虚無まで切り取っていたのに対し、「硫黄島」では不毛な戦いそのものをメインに描いています。その対比として、硫黄島にやってくるまでのそれぞれの兵士の過去が、フラッシュバックという形で描かれて行きますが、そのフラッシュバックのオーソドックスさが、時折まるでショートコントのようにも思えました(あくまでも私感ですが、バロン西や栗林中将の凛々しさ/カッコ良さが、たまにメタっぽく思えるのもしかり)。
アイロニー満載の「星条旗」に比べ、「硫黄島」がかなりオーソドックスかつ直球な作風になっているのは、イーストウッドの「俺が入り込めるのはせいぜいココまで。俺が愛するネイバーフッドとブラザーフッドの物語、それは日本兵に置き換えても通用するはずだろう?」という割り切りの良さに見え隠れしているような気がしました。したがって、二次大戦下の日本軍の事情/事象を、イーストウッドが「信条に従い丁寧に撮った作品」というのが「硫黄島からの手紙」なのではないか?そんな印象を抱きました。
追記中村獅童演じる伊藤中尉の末路はコメディリリーフを意図していると思うのですが、劇場内は水を売ったように静まり返っていました。