専門学生は見た。

「それで・・・その不審な男をみかけた時間というのは?」
「そうですね・・・大体7時半ぐらいだったと思います」
「場所はさっき聞いた場所に間違いはないね?駅の北側、中央線の線路沿い?」
「はい、間違いありません。近くの専門学校に通っているので」
「裏道としてもよく利用していた?」
「そうですね、たまに抜け道として」
「その・・・男は何かを持っていた?」
「袋を・・・何かポリ袋のような袋を背負っていたような気がします」
「ポリ袋?」
「そう、ポリ袋。白いポリ袋だったと思います」
「それを背負って?担いでいた?」
「はい。ホラ、よく軍隊とかで使うようなズタ袋みたいなヤツ、あれを片方の肩にかけて背負うでしょ?あんな感じです」
「その男の顔を見た?」
「いや・・・それがよく見えなかったんです。突然サイレンが鳴り出して」
「サイレン?」
「そうです、避難訓練みたいなサイレンが」
「近くで火事でもあったとか?」
「いや、よくわかりませんけど。で、気付くと、足元にデカいゴキブリがワラワラと溢れ出して」
「デカいゴキブリ?」
「海外で見かけるようなデカいゴキブリ。それでそっちに気を取られていて、気付くともういなかったんです」
「その不審な男が消えていた・・・?」
「はい」
「顔も良く見えなかった」
「そうです。何と言うか、その・・・頭に三角のコーンみたいなのを被っていて」
「三角のコーン?」
「はい。かなり異様な感じでした」
「うーん・・・」
刑事が困惑した顔で頭をかくと、ドアが開き、もう一人の刑事が取調室に入室してきた。
「よくわかった。じゃあ、この人に似顔絵を描いてもらったらもう帰ってもイイから。あ、あとそこにカツ丼あるから良かったら食べてって」
「あ、どうもスイマセン。いただきまーす」