生まれたその日に両親殺し 〜レディ・イン・ザ・ウォーター〜

レディ・イン・ザ・ウォーターを観ました(@109シネマズMM)
惜しい。凄く惜しい。賛否両論あるようですが、私はこの映画に「大傑作に成り損ねた佳作」という印象を持ちました。核心にこそ触れませんが、未見の方は読まない方が良いと思います。以下、自分が感じた問題点を挙げてみます。

  • 「世界の約束」が不明瞭

何も水の精の役を倍賞千恵子に演じさせろ、とは言いませんが、このファンタジーの成り立ちが、いまいち細部のツメの部分で甘いような気がしました。例えば主役のポール・ジアマッティをはじめ、皆よくわからない内にレディ=水の精:ナーフを信じています。この映画の「集合住宅1棟=全世界」という素晴らし過ぎる世界観で言えば、何か本当にせこい、例えばナーフが「この国の王に死の危険が迫る」と予言すると、その晩に「大統領が大好物のプレッツェルを喉に詰まらせて死にそうになりました」とニュースが流れ「…わわわわホホホ本当だぁ〜〜〜〜」とナーフを信じ始めるとか(「サイン」のホアキンのようにね)、そういうお話にエンジンがかかり始める前にワンクッションあるともっと良かったのではないかと思います。

  • アパートの住人のパーソナリティ/行動原理が不明瞭

これは上記の問題点をクリアしていれば、それぞれ信じ方によってキャラ立ちがなされ、もっと各人の行動が明確になったはずです。あの韓国人のお母さんが「ホラ!私の話は本当だったでしょ?!」と絡んでこないのは非常に不満でした。それに“スモーカーズ”なんていうオイシイ設定を用意しておきながら、あのキャラの立ってなさは非常に残念な気がします。

  • ブライス・ダラス・ハワードがあんまり綺麗に撮れてない

もしかしたら一番不満だったのはココかもしれません。「ヴィレッジ」の時は凄く美しく画面映えしていた彼女ですが、今回は妖精役ということで変な赤毛でクルクルとしたウィッグ(?)を付けて演じています。これが全然イイと思えなかった。つまり私は冒頭からお話に置いてけぼりを喰らい、以降エンドロールまで、水の精に感情移入できないまま作品全体を俯瞰で眺めるに至った。そういう事だと思います。


確かに「集合住宅1棟=全世界」というアイデアは素晴らしい。先に否定はしましたが、キャラ立ちしている素晴らしい住人も何人かいました。オチの彼とか、映画批評家の彼とか。主役のポール・ジアマッティに至っては、クライマックスの独白などちょっとホロッときてしまうぐらいには良いシーンでした。クリストファー・ドイル(!)の撮影も素晴らしい。思わず住んでみたくなってしまう、集合住宅のセットも本当に素晴らしいです。こうした傑出している各要素は確かにあるのに、個人的には細部がシックリこなかったので、非常に惜しい作品だと思った訳なのです。
まぁでも、どこかの人気ブロガーが、作品が楽しめなかった時に歯に無理から食べカスを挟みながら「(ワスが)作品に選ばれてなかったーよ」と言うように、私も作品に選ばれていなかっただけなのかもしれません。映画としてのクオリティは低いどころか高く(特に志が)、決してつまらない作品ではありませんので、気になっている方は是非ご自分の目でしかと確認してみてはいかがでしょうか。

ところで「LITW」を観て、私はある“シャマラン・メソッド”とも言える方程式で、M・ナイト・シャマランが映画を作り続けていることに気付きました。それは・・・
翼のない天使 [DVD] 現実 シックス・センス コレクターズ・エディション [DVD] 超現実 アンブレイカブル [DVD] 現実(?) 
サイン [DVD] 超現実 ヴィレッジ [DVD] 現実
といった具合に、「現実」「超現実」というテーマを交互に撮り続けているのです!ジャーン!
「LITW」も「超現実」の範疇のお話なので、またこのシャマラン・メソッドが当てはまります。となると次回作は「現実」オチの作品になるのか?今から楽しみです。