DJ SHADOW 『THE OUTSIDER』

Outsider

Outsider

ソロアルバムとしては約4年ぶりの3枚目、「ハイフィーを取り入れた」ということで賛否両論、支持/不支持が真っ二つに別れているようです。私はといえば、試聴して感じた「う〜ん…」という懸念が、ヘッドフォンで聴くうちに大分印象が変わってきました。そりゃあもちろん、大傑作2nd「プライベートプレス」と比べるのはアレだと思いますが、これはこれでありなのではないか?という気がしてきました。その理由のひとつに、私が“Hyphy”という音楽に無知だったからかも知れません。

HYPHY:
ヴァレホ〜ベイエリアを中心に広まったスラングで、〈hyperactive〉を省略したもの。雰囲気的にはメチャメチャ激しく動き回る状態を指す形容詞ですね。リル・ジョンの〈クランク〉同様に、もともとは特定のサウンド・フォーマットを示す呼称ではないのですが、執拗なヴォーカル・サンプルやチープなシンセを反復したダイナミックなビートで聴く者を〈ハイフィー状態〉へ導くようなダンス・トラックを〈ハイフィー〉と通称しているわけですね。

とのことで、上記の引用「特定のサウンドフォーマットを指す言葉ではない」からも解るように、まぁ「ハイフィーっぽくね?」という大まかな括りなのでしょう。
http://youtubech.com/test/read.cgi%3Fdl%3D7L9tvYOSBFA%26ext%3D.flv -E40 & Keak Tell Me When To Go
ズンドコいってるトラックが祭囃子っぽくて威勢があって大変ヨロシイですね。これなんかを聴くとスヌープfeat.ファレルの「drop it like it's hot」を彷彿とさせます。あの曲はネプチューンズからのハイフィーシーンへの返答というわけだったのですね。
話が反れましたが、元に戻してシャドウの新譜の話。何と言うか「真面目な人なんだろうなぁ」というイメージが確固たるモノに変わりました。まるでHR/HMを志す人の頑なさ。ニューアルバムの数曲を占めるハイフィーチューンは、さながら彼の研究発表のようです。いわゆるハイフィーというルールの範疇で、彼ならではの極太のキックやエレクトロな上モノを絶妙に配置しています。
他の曲では、カサビアンのメンバーが参加したほとんどスラッシュメタル(?)な曲や、以前UNKLEでも試みた歌モノ路線のナンバーがあるかと思えば、これまでのシャドウ路線の曲も混在する、非常にバラエティに富んだアルバムとなっております。「トム・ヨークとクリス・マーティンを足して2で割ったような…」とか形容されちゃうクリス・ジェイムズに、本当にそう聴こえちゃうような楽曲を提供しちゃってます。しかしながら、こういった歌モノ曲でもドラムのオカズが絶妙だったり、シャドウ先生まったく抜かりがありません。
本人曰く「サンプラーで出来る事は前のアルバム(2nd)でやり尽したので、また同じサンプリングアルバムを作るのでは意味がない」とのこと。しかし、今作でもサンプリングを全く捨ててしまったわけではなく、随所にそうした良い意味での“癖”のようなモノが垣間見えるので、まだまだDJ SHADOWは大丈夫だろう、という気がします。
明らかに“異形”として産み落とされてしまったシャドウ流ハイフィーに、しばらくは浸ってみようと思います。
http://youtubech.com/test/read.cgi%3Fdl%3DfeYbZA4RUXI%26ext%3D.flv -3 Freaks Feat Keak Da Sneak Turf Talk