先生、わからない所があるんですけど… 〜「トランスアメリカ」〜
「トランスアメリカ」を観ました(@横浜ニューテアトル)。
LAに住む、性転換手術を数日後に控えたトランスセクシャルのブリー(この時点はまだ竿あり)。そんな彼/彼女の元に一本の電話が。それは以前、男性として肉体関係を持った女性との間に、どうやら子供がいたことを知らせる電話だった(母親は自殺したとのこと)。息子のトビーはNYの警察に保護されているらしい。彼女は動揺するが、セラピストの命令もあり、とりあえず身分を偽って息子の身柄を引き取りに向かう事になるのだが…というお話。
例えばこういったテーマの先駆者にファレリー兄弟がいますが、この「トランスアメリカ」も、粗筋だけ聞くと物凄くなくえげつない感じがするし、ファレリー兄弟のようにマイノリティの人々を笑いのネタにすることによって、その差異をスラップスティックな笑いと一緒に吹き飛ばすような映画を想像していたら、ちょっと地味とも言える位に(褒め言葉)実に地に足が着いたロードムービーであったし、親と子という関係に焦点を絞った人間ドラマでもありました。
トランスセクシャルの男性を女優が演じる事で話題となったこの作品ですが、主人公ブリーを演じるフェリシティ・ハフマンが本当に凄いです。もうホントに見続けていればいるほど「ex.男性の人」にしか見えなくなってきて、後半などは「わー本当に女の人みたいにキレイだなー、って女の人か」と言う具合の倒錯っぷり。最初は男優に演じさせようとした所、どうもピンとこなくて、最終的に女優をオーディションし、フェリシティ・ハフマンに白羽の矢がたったらしいのですが、「よく引き受けたよな」「よく抜擢したよな」と、演者と演出者、両者の英断に勇気と感動を覚える作品となっております。
そして息子役のケヴィン・ゼガーズも非常に素晴らしいです。人との繋がりを持続させるためには、自らの体を差し出す事を苦とも何とも思わない(トビーは男娼をしていて警察に保護される)、ピュアでいて尚且つ複雑な青年を好演しています。なんと言っても上記のルックス、ピッチピチの84年生まれ。お姉さま方の黄色い声が聞こえてきそうです。
そして「デスパ妻」として人気を博したハフマンさん、本当はこんな感じ。
「トランスアメリカ」の製作者として名を連ねるウィリアム・H・メイシーとの2ショット。彼女の旦那様でもあります。
個人的に面白かったのが、本作の“タッチング・カントリー”とも言える「アメリカ人も田舎再発見」的な描写の数々。「ブロークバック・マウンテン」もそうでしたが、アメリカの田舎の金持ちハンパねぇなぁ!というか。登場する人々、それぞれ描き方に監督の愛が感じられたのもとても良かったです(ヒッピーには悪意があったけど)。