「ブラウン・シュガー」を観ました。
映画の冒頭。ヒップホップ誌の女性編集者がこんな風に振り返る。
「ヒップホップと恋に落ちたのはいつ?」
その質問に、ラッセル・シモンズ、クールGラップ、デ・ラ・ソウル、ピート・ロック、コモン、ブラックソート&クエストラヴ、メソッドマンetc…そうそうたる面々が「そりゃ『ラッパーズ・ディライト』だろ!」「いやいや『サッカーズMC』だろ!」といった具合に答えていく。
1984。一人の少女が(先ほどの編集者の子供時代だ)バスケットボールのコートの人だかりに吸い寄せられていく。ブレイクダンスだ!少女は目を輝かせる。「あっちに行ってみようぜ!」人だかりが移動する。ブラザー達が輪になってラップを始めた。輪の中心には眼帯をした男。そう、スリック・リックだ。少女に一人の男の子が話し掛ける。「こっちの方がよく見えるよ!」男の子は少女の手を取り、ベンチに引き上げてくれる。そこは2人だけの特等席だ。ヒューマン・ビートボックスとライムは繰り返され、ブロック・パーティーは続いて行く・・・
この様なとてつもなく甘酸っぱい幕開けを見せられて「もしや大傑作か?!」と身を乗り出して鑑賞を続けるものの、以降は“恐ろしいぐらいに既視感のある”トレンディドラマでした。簡単な粗筋を説明すると、上記の男の子と女の子は親友として大人になり、男はヒップホップレーベルのA&Rに、女は編集者となります。お互い好きあっているのは(見てるこっちが気恥ずかしくなるぐらい)明らかなのに、「俺たち(私たち)親友だよな?(よね?)」と確認しあい、それぞれ結婚したり恋人がいたりする。男はモス・デフ演じるラッパーを「彼こそ本物だ!オレが彼をデビューさせたい!」とレーベルに申し出るが、しょーもない白人/黒人混合のグループを担当するように言われてしまう。果たして、2人の恋の行方は?男は見初めたラッパーをデビューさせることが出来るのか?!
もうなんか、これのロックバンド/シンガーのヴァージョンを100万回ぐらい観た気がするんですが、そうした既出の作品と違うところは、作品に登場する主だったキャラがほぼ全員黒人だと言う事。これはヒップホップが「恋愛ドラマのサブテーマとして注釈なしでも成立するようになった」という、ある種の成熟を意味しているのかも知れませんが、この作品においてヒップホップはただの添え物の域を出ないし、肝心のラブストーリーもココまでステレオタイプな物語として何の疑いも無しに提示されると、正直辟易しました。あと、上記画像を見てわかる通り、「モス・デフがクィーン・ラティファを落とそうとする」ってのは、いくら何でもちょっと強引過ぎないか?と思ったけど、劇中の二人が本職の俳優さんたちに比べ、お芝居の力の抜き加減を凄くよくわかっていて「さすがミュージシャンだなぁ」と感心しました。
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