「ニュー・ワールド」を観ました(@109シネマズMM)。

映画を撮っていた事を全然知りませんでした。テレンス・マリックの新作。しかも「ポカホンタス」の物語。「一体どんな映画なのやら…」と、期待と不安が綯い交ぜの状態で初日に観に行ったら、コレが「天国の日々」と「シン・レッド・ライン」を足して2で割ったような映画でビックリ。「それ一体どんな映画だよ」と突っ込まれそうですが、いやホントなんですよ!その2本に限定する事もないですが(っても後は「地獄の逃避行」しかないですが)、いわゆるテレンス・マリックらしい映画で、非常に満足しました。久々に「あー映画館で映画を観たなー」という心地良い満足感を味わう事が出来た作品でした
新天地を求めてイギリスからやってきたジョン・スミスコリン・ファレル一行(幕開けの時点で彼はお尋ね者、後に先住民との交渉役に抜擢される)が、先住民達と親交を深めるものの、部族の王様に「もう帰れや」と言われ、でもとても「この地に新たな国を作るつもりでやってきた」とは言えない。母国から追加の物資は中々やってこず、上陸して築いた砦には飢饉や伝染病の影が忍び寄る。そして、いつまでも自分達の土地から出て行こうとしない白人共に「イラッ」ときた王様が、ついに砦に攻撃を仕掛けてきて…というのが前半。
スミスは一度、先住民に捕えられ、処刑されそうになる所を王の娘であるポカホンタスに助けられるのですが(そして恋仲に)、ここで村の手付かずの自然の美しさなどをエマニュエル・ルベツキのカメラがたっぷりとすくい取ります。ネイティヴ達のスピリチュアル描写が延々と続き「これはちょっとヤバイかな?」と思い始めた所で、スミスは砦に還されます。この戻ってきた時の、砦の殺伐とした描写が素晴らしくて、ガキが「ねーねー人食べたことある?あの人、人を食べた!」と延々ブツくさ言ってたり、皆、飢饉の為に夢遊病者のようにフラフラしていたり(またジョン・サベージだよ!)、ああ、村の美しさとの対比でコレをやりたかったのか!と妙に合点がいきました。黄色いキノコの上を、手足の細長い蜘蛛がゆったり通り過ぎ「汚れてしまった」みたいなナレーションが被さるカットは、ちょっとあまりの不快感に悶絶してしまいた(素晴らしくて)
後半はイギリス人が騙して連れて来たポカホンタスが囚われの身となり、そこで新たなイギリス人男性ロルフと出会い、彼と結婚して子供を設けるまでになる、という辺りをメインに進行。この後半に登場するロルフ演じるクリスチャン・ベールの王子様っぷりがハンパではないです
 100点。
「君が僕を愛するようになるまで待つよ」だなんて、どこの少女漫画かと思いました。コリン・ファレル、クリスチャン・ベールというダブル・キャストを聞いた時、絶対に「イィィィーーーハァ!土人皆殺し!」みたいな狂った将軍役か何かかと思ってたんですが、真逆の役でした。後半の絵に描いたようなメロドラマを、彼がしっかりと支えています
で、全編に渡って出ずっぱり、言わば主役であるポカホンタス役のクオリアンカ・キルヒャー。「ニュー・ワールド」は、新大陸を開拓していく過程を目撃する映画でもあるし、観客が彼女を発見する映画でもあります。とにかく圧倒的な存在感。もう彼女がキャスティングされた時点で、この作品の勝ちは決まったようなモノでしょう。現在16歳(!)、驚愕のミドルティーンはカポエラを修得しているそうです。
 120点。
「ニュー・ワールド」は、ポカホンタスという女性の個人史を描いた映画です。“でんぐり返し”こそしないけど「放浪記」です(あ、でも側転するけどね!)。「時代に翻弄された云々〜」と言う言葉が安っぽく聞こえてくるぐらい、テレンス・マリックは彼女にピッタリとカメラを据え、一人の女性として凝視します。彼女を囲む2人の男に青臭いヴォイスオーバーで心情を語らせます。つまりは、これまでのテレンス・マリック映画と何ら変わりがないのです。「大切なのは成長してしまわずにスキルアップすることなんだ」と言ったのは、確かパルプのジャービス・コッカーだった気がします。これまでの3本のマリック作品を、久々に観直したくなりました。

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