la HAINE

フランスの暴動がドイツやベルギーにも拡大しているようです。「フランスで暴動!」というニュースを聞いた時、つい最近観直したばかりのこの映画を真っ先に思い浮かべました。

憎しみ [DVD]

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今回の暴動はどうやら10月27日にパリ北東、セーヌサンドニ県の変電施設で起きた少年2人の感電死事件がきっかけになっているようで、少年2人は「警官に追われていると思い、施設に逃げ込んで感電したとみられている」とのことらしいです
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051103-00000027-kyodo-int
この少年2人の死亡のニュースをきっかけに、郊外の低家賃住宅(=団地)に住む、多くの貧困層/移民労働者の若者たちの日頃の集積した不満が爆発→フランス全土に拡大、という構図は、正に10年前「憎しみ」で提示された形と全くと言って良いほど同じで、それはさながらロス暴動を予見していた「ドゥ・ザ・ライト・シング」のようです。
しかし、こうしたフランスにおけるいわゆるゲットーの問題は「憎しみ」が公開された95年どころか、80年代、70年代中頃から常に火種が燻り続けている問題のようで、「憎しみ」と現実のフランス・ゲットーの背景については以下のサイトに興味深い記述があります

「憎しみ」では暴徒化する若者に対して、それを取り締まる警察側の暴走をラストで象徴的に描いているのですが、今回の暴動騒ぎでもドビルパン首相が「いかなる無法地帯も容認できない」と発言してることだし、権力側の行き過ぎた鎮圧行動が更に火に油を注ぐようなことにならなければ良いが…と切に願うばかりです。「憎しみ」は、一人の黒人青年の、以下のような台詞で幕を開け、そして幕を閉じます
「50階から飛び降りた男の話 落ちながら男は何度も確認する ここまでは大丈夫 ここまでは大丈夫 ここまでは大丈夫 問題は落下ではない 着地だ」

最後に「憎しみ」で使用される音楽の話を少々。まずオープニングから実際の暴動ニュース映像に被さるボブ・マーリー「burnin' and lootin」のカッコ良さ!(「ドーン・オブ・ザ・デッド」OPタイトルはこれの影響?)以降もアイザック・ヘイズ「that loving feeling」が流れたり、ザップ&ロジャー「more bounce to the ounce」でブレイクダンスをしたり、団地に住む若者がでかいアンプを窓の外に向け団地全体にスクラッチを響かせる、といったシーンが印象的に描かれ、優等生的な黒さでシビれます。レベルミュージックと言えば一般的にパンクロックというイメージが喚起されますが、有色人種にとってのレベルミュージックと言えばやはりレゲエでありファンクでありヒップホップなんだなぁ、と改めて思いました。ちなみに「憎しみ」は劇中使用曲を収録したサントラと、映画にインスパイアされたフランスのヒップホップ勢によるコンピ、という2種類のサントラが存在します。

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 ↑これがヒップホップ

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 ↑こちらは収録曲編